かぽーん 「よし、じゃあ解散!今日は委員会活動もないからゆっくり休め!」 ありがとうございましたー!とやけくそに挨拶をして、僕たち三年生はだああっと地面に転がった。い、ろ、は、合同での野外演習だった。 「きっつ…」 「さすがに堪えたな…」 息も絶え絶えに会話するのは僕と作兵衛だ。作兵衛なんか縄で三之助と左門と繋いで走っていたからあっちこっち引っ張られて大変だっただろう。 「作ー!水飲みにいこー!」 「左門…!?復活はや…」 「大丈夫か要」 「そういう三之助さんも余裕の表情ですね…」 「あっはっは!まぁ僕らは!」 「体育委員会と会計委員会だし?」 「がああー!」 お互いに肩を組んで笑う2人に、ぷちっときたらしい作兵衛が飛びかかった。 「だいったいなぁ!俺がこんなに疲れてんのはお前らのせいだってんだよ!」 「あはははー」 「笑ってるバヤイか」 ぺし、と後頭部を叩かれて顔を上げると呆れ顔の藤内がいた。僕はうつ伏せのままキョロキョロと辺りを見回す。 「藤内、数馬は?」 「孫兵と一緒にとっとと水飲みに行かせた。はやく行かないと並ぶぞ」 「優しいね藤内」 「はあ?」 「作兵衛ーやめやめ。はやく水飲みにいこう」 「よーし行くぞ!こっちだ!」 「馬鹿、こっちだろ」 「あっちだ馬鹿ども!」 いつものやり取りを背に、藤内と歩き出す。みると水を飲み終わった大半の生徒は食堂に向かっていた。 「あちゃー。これじゃ食堂混むかな」 「かもな」 「あ、要。お疲れ様」 「数馬もね」 ぱんぱん、と数馬の髪についた葉っぱをはらいながら笑った。 「なら先に風呂に入ろう」 三之助が僕と藤内の手を取る。孫兵が水のしたたる口を拭って眉をひそめた。 「風呂?」 「この時間なら空いてるだろ」 「いや空いてるに決まってるよ。早すぎるし」 「まーいいじゃん要。作と左門も入るだろ?」 「おお、楽しそうだな!」 「あーまあ、いいけどよ…」 藤内は手を握られたまま怪訝そうな表情を浮かべる。 「三之助…お前なんか良からぬこと考えてないか?」 「考えてない考えてない。たかが風呂だぜ?一年ときはよくみんなで入ってたし」 「三年生になって忙しくなったから、みんなで入れなくなったよね。僕はいいよ!」 「な、数馬!?」 なにやら煮え切らない態度の藤内に三之助が藤内の顔を覗き込んで、にやりと笑った。やめて三之助。鉢屋先輩思い出す。 「なーんだよ藤内?」 「僕らもう三年生だぞ!?みんなでわいわい風呂なんて…」 「でも五年生はたまにわいわいみんなで入ってるぞ!」 「あそこは仲が良いから!」 「聞き捨てならないなぁ藤内。僕らもでしょ?」 「う…」 左門と数馬に言い寄られ、藤内は真っ赤になって俯いた。 「藤内ー藤内ー」 「っ…わかったから引っ付くな三之助!」 「やったー!じゃあ用意持ったら脱衣所集合な!よし、こっちだ!」 「ばか左門、こっちだよ」 「お前ら…いい加減にしろよ…!あっちだ馬鹿!」 わたわたと走り去って行った三年ろ組を僕は苦笑しながら見送った。 「はあぁ…恥ずかしくないのかあいつらは…」 「まぁまぁ藤内」 「三之助のやつ絶対なにか企んでるぞ要…!おそらくお前も含めてだ!」 「え」 「手、握ってたからか」 孫兵の言葉に、藤内がぶんぶんと頷く。まさかぁ、と数馬は苦笑するが藤内は信じていないみたいだ。 「あーもう仕方ない!行こう数馬!遅れるのはなんか悔しい!」 「はいはい。またね孫兵、要」 「うん」 数馬に手を振り返していると、ぼかっと頭に衝撃。おい今日何回目だ! 「孫兵ー痛いー」 「はやく飲め」 「ぬー。待っててよ孫兵、僕も一緒に行くから」 「…僕は脱衣所には行かない」 「駄目」 水を飲み終えた柄杓で僕は孫兵をつついた。 「駄目だよ。僕は孫兵を1人にはしない」 「…お節介」 「だっ…!前言ったよね!それわりかし傷付くんだよ!」 「ふん」 「あっ!孫兵!最近左近くん並みに冷たくない!?ちょっと待ってよ!」 ※※※ かぽーん。 「ひゃほー」 三之助の大浴場をみた第一声がそれだった。呆れ顔の作兵衛が三之助の背中を押す。 「なんだよひゃほーって。はやく入れ」 「いやほんとに誰もいないんだなー」 「いくぞー!」 「!?左門っ」 三之助と作兵衛の横をすり抜けて、この馬鹿には"転ぶかもしれない"という考えはないのだろうか、一気に突っ走るとドボーンと盛大な音をたてて浴槽に飛び込んだ。 「俺も俺もー」 「や る な」 「危ないよ三之助。怪我したら許さないからね」 「数馬さんお早い到着で…」 「ほんとに誰もいないんだろうな…」 は組2人が到着して、4人はぞろぞろと風呂場に入る。桶のお湯をザバァと頭からかぶって、作兵衛は脱衣所に声をかけた。 「孫兵ー、要ーはやくしろよー」 「はいはいお待たせー。いやー孫兵が嫌がるもんだからさー。捕まえるの大変だったよー」 「…」 かぽーん。 7人が浴槽に揃い、三之助は左門とお湯のかけ合いを始めるし、作兵衛はそれに巻き込まれる数馬を救出してるわで、僕と藤内と孫兵は保護者のような気分でそれを傍観した。 「ったく…先輩方がいないからってあいつら…」 「あれ、藤内。おでこ怪我してる」 「ん?ああ、走ってるときに枝が当たったんだ。たぶんそのときの」 「孫兵は怪我してない?」 「ああ」 「孫兵さん、機嫌直してくださいよ…」 「…」 「もー…………?」 そこではた、と僕は気がついた。さっきまでギャーギャー騒いでいた左門と三之助がずいぶん静かだ。みれば2人は騒ぐのをやめて、ものすごく真剣な表情で僕と藤内をみている。 「え…あの、なに?」 「な、言った通りだろ左門」 「ああ、言われてみればそうだな!」 「なんだお前たち」 藤内も顔を歪めて2人を見つめ返す。 「なに言ってんだよお前ら」 「いや、だからさ…」 「…!」 耳打ちをされた作兵衛がぼんっと赤くなった。そして三之助は慣れているのか、電光石火で振り下ろされた作兵衛の拳を受け止める。 「ちなみに作兵衛はどっち?」 「……要かな」 「はぁーん。可愛い系か」 「僕はどっちも好きだぞ!あと孫兵も数馬も綺麗だと思う!」 「は?」 「え?」 いい加減に収集がつかなくなったので僕が代表して、なるべく嫌そうな表情を作り質問した。 「なんの話…?」 「いやぁ、髪下ろしたお前ら2人って風呂だとこう、しっとりして女の子みたいだろ?」 「「…」」 僕と藤内はなんの打ち合わせもなく、三之助に桶をヒットさせた。三之助が浴槽に沈む。作兵衛がそれはそれは真っ青な表情でつぶやいた。 「す、寸分の狂いもない桶さばきっすね…」 「い組なめんな」 「は組なめんな」 「もしかして、そのために風呂に入ろうって…?」 孫兵の言葉に復活した三之助がそれは良い笑顔で頷いた。 「混浴みたいな!?」 「三之助ええぇえ!」 「ととと藤内!落ち着いて!」 羞恥で三之助に飛びかかろうとする藤内を数馬が必死におさえる。僕はわなわなと震えた。 「あのさ三之助…僕は女の子じゃないし、ものすごく不快なんだけど…」 「でもでも!可愛いぞ要!髪もふわふわしてるし」 「まぁ、顔も中性的だよな…」 「作兵衛さん!?」 触らせてーとじゃれてくる左門となにやら納得したような作兵衛に三之助のように桶をヒットさせるわけにもいかず、ちらりと孫兵に助けを求める。 が、しかし。最近左近くん並みに僕に冷たい孫兵さんが爆弾を投下なさった。 「そういえば要、昔はよく女の子に間違えられたって言っていたよな」 「孫兵ええぇえ!」 「要、これを期に俺と付き合ってみないか」 「ばか言うな三之助!離ーれーろー!」 手を握ってくる三之助に僕が噛みつくように怒鳴る。 「なんで左門はよくて俺は駄目なんだ!?なぁ!」 「自分の胸に聞けっ…!」 「いい加減にしろお前ら!もっと別の話題は無いのかよ!」 藤内の一声で、三之助がパッと手を離した。そしてまたこいつはとんでもないことを言い出す。 「じゃあ、先輩のなかで誰が一番経験豊富だと思う?」 → 本当にすみません(条件反射) まだ執筆途中ですが続き…たい。需要あるのか?(´^ω^) ※ブラウザバックでお戻りください。 |