黒木庄左ヱ門 ※現代パロディ 意識してください。 僕のこと、1人の男として。 意識してほしい。 僕を、黒木庄左ヱ門を。 「あ、庄ちゃん」 「庄左ヱ門じゃないか」 「…こんにちは」 にこりと張り付けた笑みは自分でも吐き気がするくらい、白々しい作り物で。そういうのに敏感な鉢屋三郎先輩はきっと気づいているんだろうな、と思う。 どうして要先輩が鉢屋三郎先輩と一緒に歩いてるんだろう、とか。鉢屋三郎先輩は明らかに要先輩を意識しているよなぁ、とか。 「庄ちゃんお買い物?」 「はい。今日は乱太郎の誕生日なので、買い出しに」 「あ、乱太郎くんの?そっかあ、偉いね庄ちゃん」 "偉いね、庄ちゃん" 昔から要先輩にそう言われるのが嬉しくて、頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って。でも、鉢屋先輩には適わなくて。 「乱太郎くんかぁ。私いつも保健室でお世話になってるし…なにか私もプレゼント用意しようっと」 「要は鈍くさいから、よく怪我するもんな?」 「最近は全くしてないからね!?いい加減なこと言わないでよ三郎!」 「はいはい。よしよし」 「…あのね、三郎」 ああ、まただ。 すぅっと全身が冷えていくのがわかる。少し頬を赤くして鉢屋先輩を睨む要先輩はすごく可愛くて。鉢屋先輩も幸せそうに笑う。 「…僕、もう行きますね」 「え?買い出し1人で大丈夫なの?庄ちゃん。荷物多いんじゃない?」 「そうだな、一緒に行くか」 「ね、庄ちゃん。行こう」 「!」 躊躇いもなく握られた僕の手に、熱が集まっていく。やめてください要先輩。お願いだからもう、僕を期待させるのは。 「要…先輩」 胸が苦しい、顔が熱い、音が流れていく。握り返すことのできない僕に、要先輩はただ笑っているだけで。 "庄ちゃんらしくないね" 伊助に言われた。冷静沈着な庄ちゃんが要先輩にこんなに振り回されるなんて。恋は盲目とはいうけどさ。庄ちゃんなら鉢屋先輩から要さんの目を向けさせることも出来るじゃない? なにを迷ってるの? 「どうしたの?庄ちゃん」 違う、違うんだよ伊助。 僕は要先輩を困らせたくないんだよ。だって、だって、ずっとずっと要先輩の"弟のような存在"だった僕が、要先輩に「男としてみてほしい」なんて言ったら。 きっと、要先輩はすごくすごく困るんだ。 だから、だから僕は 「…なんでもないです」 気持ちを押し付けたり、伝えたりするだけが決して恋では無いと僕は思うから。 だから、まだ、云えません。 大好きです。要先輩。 好き、とは? (想い考えること)(だと思います) ※ブラウザバックでお戻りください。 |