ごめんなさいのきっかけ2

「要先輩は座っていて下さい!!!!」


と彦四郎くんに厨房から追い出されてしまった。それもこれも僕の不器用さ故にである。


なぜだか僕は包丁が扱えない。刀なんかの同じ刃物は授業でも扱うのに、包丁は勝手が違うらしい。最終的には包丁が手からすっぽ抜けて釜戸にダイブした。


「うーん……おかしいな」


いや僕が料理下手なのは今に始まったことでは無いんだけど。


厨房からはテキパキと動く2人のお互いを指示する声が聞こえてくる。うーんうーんやっぱり僕もなにか手伝った方が……


「お、要だ」


「本当だーなにしてるの?」


いやいやいやいや。
そこからは考える間もなかった。突如として食堂の入り口に現れた鉢屋先輩と尾浜先輩を廊下に押し戻す。


「こんにちは!お元気そうですね!なによりです!」


「お、お、お?」


鉢屋先輩が僕に引っ張られながらおっとっとと体制を崩す。尾浜先輩も穏やかに「なになに?」と首をひねっていた。


「どうしたんだよ、要」


「いや、あーその鉢屋先輩とお話がしたくてですね」


「よしわかった私の部屋に行こう」


「えっ、わあああ」


僕が鉢屋先輩を引っ張っていたはずが、今度は鉢屋先輩に引きずられる。尾浜先輩の腕を僕が掴んでいるので、尾浜先輩も「おおお?」と引きずられた。


「なに?なに?どこいくの?」


「私の部屋。勘右衛門無粋だぞ。覗くつもりか」


「え?なにを?」


「いや要が私に部屋でセクハラをして下さいと頼むもんだからもう」


「頼んでません!!!!」


「なに?俺どうすれば良いの?」


「尾浜先輩!手離しちゃ駄目ですよ!ずっと握ってて下さい!!!」


「………きゅんときたんだけど病気かな、俺」


尾浜先輩の腕に必死にしがみつくが、鉢屋先輩はほれほれと楽しそうに僕を引きずる。ぎゃああと抵抗していると、僕の救世主が2人ひょこっと食堂から顔を出した。


「要先輩……?」


「鉢屋先輩に尾浜先輩も丁度良いところに。今出来たところですよ」


「「「え?」」」


首をひねった僕らのところへふわりと甘い香りが漂ってきた。わーと声を上げて尾浜先輩が僕と鉢屋先輩がずるずるとそれに引きずられる。


「わぁーどうしたんだ、これ?美味しそー」


「僕ら2人で作りました……あの、」


「僕が言うよ、彦。すみません、先輩方にお詫びがしたくて」


「お詫び?」


鉢屋先輩が眉をひそめる。彦四郎くんがしゅんと眉を下げながらこくりと頷いた。


「この間は委員会に参加できなくて、本当にすみません!書類、たくさんあったのに」


「先輩方にご迷惑をかけてしまって、」


庄左ヱ門くんもしょんぼりとうつむいた。そんな2人をみて、鉢屋先輩と尾浜先輩は顔を見合わせる。僕はその様子をはらはらしながら見守った。


「なぁんだそんなこと」


からからと笑ったのは尾浜先輩だった。その横で鉢屋先輩も苦笑する。


「気にしてないよ。ちゃんと2人も謝ってくれたし、ちゃんとその後に手伝ってくれたじゃん」


「ご迷惑なんかじゃないから、気にするな」


鉢屋先輩がぐしゃぐしゃとしゅんとする一年生2人の頭を撫でた。少し照れくさそうにする庄左ヱ門くんと彦四郎くんに僕も思わず頬がゆるむ。


「良かったね、2人とも」


「はい!」


「あ、要先輩これありがとうございました!」


中在家先輩のレシピ本が大いに活躍したようだ。庄左ヱ門くんから本を受け取り、もう一度良かったねと笑う。


「気にはしなくて良いけど……彦四郎、食べていい?これ」


「もちろんです!」


「今、僕がお茶いれますから召し上がって下さい」


「あ、手伝うよー僕」


「よーしじゃあ席つけーみんなで食べよう」



ごめんなさいのきっかけ
(お茶入りましたよー)(うま!器用だなー2人ともー)(本当ですよねー。料理上手なお嫁さんほしいなぁ)(私とかどうだ要。料理上手だぞ)(お嫁さんだっつの三郎)(はい彦四郎くん、あーん)(じ、自分で食べられますから!)


※※※
学級クラスタである私が通ります。好きな子ほどうまく書けない現象。あああああああああちくしょおおおおおおおお!!!

しかも大変お待たせしてしまって申し訳ないです……!リクエスト企画参加ありがとうございました!



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