きみに悪戯03 「ああああ…もう、なんで今日に限って授業は長引くし、図書室は混むんだよ…!」 今日は委員会がある日なのに。僕は眉をひそめてぱたぱたと廊下を走っていた。きちんと謝らないと立花先輩に叱られる。 "遅れました!すみません、立花先輩、授業が長引いて" 「よし…」 作法委員会活動が行われる部屋に辿り着いた僕は、すぅと息を吸って勢い良く扉を開けた。 「すみません!遅れ……え?」 思わずぱちくりと目を瞬かせる。部屋にいるはずの作法委員会のメンバーは1人もおらず、その代わりだとでもいうように、藍色の着物を着た女の子がちょこんと座布団に座っていたからだ。 「え、あ、あれ?」 部屋を間違えた?慌てて確認するが部屋は間違えていない。ここで合っている。 「あ、あの…どちら様ですか?」 「えっ…あ、あの…」 キョトンとこちらを見つめていた女の子は、僕の問いにどもりながらも応えた。 「ぼ、…私、立花仙蔵さんにお願いして、あなたを待っていたんです」 「えっ…僕を?な、なにか御用でしょうか?」 女の子の前、向かいに座って知り合いだっけ?と顔を確認する。そして息を飲んだ。 「(う、わ…可愛い子だなぁ…)」 可愛いらしい顔立ちに癖っ毛の髪がよく似合っている。思わず顔に熱が集まって、慌てて視線を逸らした。 「ど、どこかでお会いしましたか?」 「えっ……え、と…こ、ここの前であなたを見かけて!素敵な方だなぁって…と思って…」 「えっ…」 俯いて真っ赤になる女の子。え、なに、どうして?本当に?という言葉がぐるぐるして、僕まで顔が熱くなる。 「それで、……ッお話しできたら、なぁ…と思ってしまいまして…すみません、ご迷惑ですよね…」 「えっ…!?いや、あの、」 真っ赤な表情のまま、しゅんとした顔をする女の子に僕は完全にパニックになった頭で必死に返答を考える。 どう、どう返したら良いんだよ…!? 「迷惑じゃ、ないです…けど…あの」 「はい」 「な、名前は…なんというんですか?」 「え゛っ…!?あ、ああー…ええと、あの、要……子と言います」 「僕は、浦風藤内と言います」 ぐるぐるぐるぐる考えながら、僕はゆっくり手を彼女に差し出した。キョトンとした表情になる彼女。 「僕と、良かったら…」 そして 「わぁああぁあ!?」 「「!?」」 凄まじい音を立てて天井からなにかが落ちてきた。 「立花先輩ー昴さんが落ちましたー」 「ああ、良いところだったのに…」 「な、な……立花先輩!?兵太夫!?」 「僕らもいるよー」 すとん、と僕の後ろから綾部先輩の声がして振り向けば、飄々とした態度で伝七を小脇に抱えた綾部先輩が降り立っていた。 「ど、ど、どういうことですか…!?ていうか、この人だれですか!?」 天井から落下して目を回している男の人を指差せば、立花先輩は全く説明する気がない口調で「昴さんだ」とだけ零した。 「…ごめんね、藤内」 「……!?な、な、お前ッ…要か!?」 聞き覚えのある声に押し倒すような勢いで女の子(?)の顔を覗き込めば、たしかによく見れば級友の一ノ瀬要である。 「おまっ…え…僕を嵌めたなー!?」 「不可抗力だよ!!あんな雰囲気できらっきらした後輩と無言の圧力の先輩に囲まれて断れるわけないでしょ!?空気が読める子なんだよ僕は!!」 「うわ最悪…この…不覚にも可愛いとか思った僕のときめきを返せ!」 けらけらけらと笑い声が上がって、みれば立花先輩と兵太夫がお腹を抱えて畳に転がっていた。仲良いな! 「しらっ…知らないよ!だいたい藤内は僕の女装見たことあるでしょうよ!なんで見破ってくれなかったのさ!」 「ああ、そんなの吹っ飛ぶくらい可愛かったからだよ!頬赤らめたの全部演技か!?」 「演技じゃないよ!死にたいくらい恥ずかしかったんだっての!はやく見破ってくれないか舌噛む勢いで待ってたのに!」 「だぁいせーこー」 「止めてください綾部先輩!」 「ごめん」 「要先輩せっかくのお化粧が落ちちゃいますよ」 「構うな伝七くん!もういい加減笑うのやめてください立花先輩!」 きみに悪戯 (僕も悪ふざけが過ぎたよ、だからごめんねって藤内)(…ハンバーグ定食おごりで許す)((あははははははは!))(うにゃあ…)(あ、起きた)(昴さんおはようございます) * 精一杯悪ふざけしてみました。すみませんごめんね藤内よ。 偏見ですがぶっちゃけ作法委員会って暇そうです。なので要くんの助っ人は来ず、仙蔵も鉢屋のように毎日要くんにちょっかい出しているわけではないので、物足りなかったのが今回で満足したのではないかと思います。 さてnanakoさまリクエスト企画参加ありがとうございました!リクエストに応えられたかどうか不安で不安で砂鉄吐きそうな勢いですが、楽しんでいただけたら嬉しく思います。 ヤマネコ ※ブラウザバックでお戻りください。 |