風の忍者02 ※※※ 「本当に有り難うございました!」 尾浜先輩としんべヱくんお勧めのお茶屋さんに移動して、冷やした手拭いで痣になってしまった喜三太くんの腕を冷やしながら僕は頭を下げた。 「いーやぁ、礼言われるようなことしてねぇだぁよ」 「すみません、僕の実力不足で…ごめんね喜三太くん。怖かったよね」 「えへへ…怖くてちびっちゃったけど、要先輩が助けてくれたし、与四郎先輩も来てくれたから!」 「喜三太ぁ、よく立ち向かおうとしたなぁ。偉ぇぞ」 「え?」 立ち向かおうとした? その言葉にキョトンと喜三太くんを見れば、喜三太くんはえへへと照れ笑う。 「要先輩が連れて行かれちゃうと思って…飛びかかろうとしたんですー」 「本当に?」 「要先輩が連れて行かれちゃうのなんて嫌ですから!」 「…うー」 「は、はにゃ!?なんで泣くんですかぁ!髪の毛引っ張られたからですか!?はにゃぁどうしよう…」 「ううん、なんでもない…格好悪いとこ見せてごめんね…」 いかんいかん涙腺がゆるっと…僕はごしごしと乱暴に涙を拭うと、慌てる喜三太くんを安心させるように笑った。 「大丈夫だよ」 「本当ですかぁ?」 「うん…っわ?」 微笑みながら頷く僕の頭に、ずしっとなにかが乗った。顔を上げれば、喜三太くんを挟んで座っていた与四郎さんが僕と喜三太くんの頭に手を置いていた。 「え?あの?」 「はにゃ?与四郎先輩?」 「オメーら、かわいいなぁ」 与四郎さんは柔らかい笑顔を浮かべて、ぽんぽんと僕らの頭を撫でた。そこまでは良かったのだが、与四郎さんの口から信じられない言葉がこぼれる。 「喜三太にこんなかわいい彼女が居たなんて、知らなかったべ。やるなぁ、喜三太ぁ」 「え!?」 「あははっ。やだなぁ与四郎先輩、要先輩は女の子じゃないですよー」 「……え?」 今度は与四郎さんの表情が固まる。そしてガタンと立ち上がると大声で叫んだ。 「男ォオ!?」 「いや!むしろなぜ間違いましたか!そりゃ小さい頃はよく間違えられたらしいですけど!」 「ああ、いんや、髪がふわふわしてたし、はぁ、男けぇ。可愛らしい顔してんだなぁ」 「やめて下さい!確実に僕のライフを削っています!」 「与四郎先輩!この人は三年生の一ノ瀬要先輩です!さっき町中でバッタリ会って、一緒にきてもらったんですよ!」 にこにこと喜三太くんが両腕で僕を披露するように紹介してくれた。そこで僕はちゃんと名前を名乗っていなかったことに気が付いて、慌てて頭を下げる。 「はじめまして、一ノ瀬要です」 「そしてそして、こちらは僕の風魔流忍術学校の先輩、錫高野与四郎先輩でーす」 「あ?ああ、錫高野与四郎だぁよ。風魔流忍術学校の六年生だべ」 「あ、六年生なんですか。じゃあもうプロに近い方なんですね…」 あの威圧も頷ける。感心しながら頷く僕をよそに、喜三太くんはわくわくとお団子を三人分注文し始めた。 プロに近い忍者かぁ。ちょっとお話を聞かせてもらおうかな、と僕が口を開いた刹那、与四郎さんからまた予想もしない言葉が飛び出す。 「なぁなぁ、髪触っても良いけぇ?」 「え?」 「いやぁ…なんか気になるさー。その髪!ふわふわしてて!喜三太、触ったことあるのけ?」 「無いです!僕も触りたーい!」 「さっき髪掴まれてぐしゃぐしゃだぁよ?結ってやるさ!」 「え!?ちょっとあの!?」 目を輝かせながら近づいてくる2人に身を引くが、勢いは止まらない。与四郎さんはわくわくと僕の髪紐を解いて、喜三太くんは僕の膝に乗ると前髪を触りだした。 「うわぁ、ふわふわだぁなぁ喜三太」 「面白いですねー!」 「あの、与四郎さん指が耳に当たってこそばゆいんですけど…わっ!?喜三太くん!?なんかナメクジさんがっ…」 「あーどれどれ、背中に入っただべぇか?」 「ひぇ!?やぁ、あのそこじゃなくて!」 「ナメ子〜動いちゃだめだよ〜?」 「っていうかナメクジさんの壺を外に出すのやめなさい喜三太くん!迷子になっちゃうでしょ!?」 「あ、あの…お団子お待たせしました…」 風の忍者。 (わぁいお団子!)(あっ違います違います!そこじゃなくて!)(ん?ここか?)(ひぇ!?いやいやいやあの!こらぁ!喜三太くんお団子食べてるバヤイじゃないから!)(…なんだろうこのお客さんたち) ※ 朝矢さんリクエスト有り難うございました! 初めて与四郎を書いたのですが、方言がお見苦しくて申し訳ないです。しかし貴重な体験ができました(^ω^)!喜三太たくさん書けて満足です。 与四郎は"男でこんな髪がふわふわなのかすげぇ!"という一心で要くんの髪に食いついてますw 頼りがいがあって格好良いけど、茶目っ気があってー…と利吉さんみたいな人だから喜三太も懐くのでは無いかなぁと、茶目っ気を出したかったのですが…ものの見事に失敗しました。すみません。 リクエスト企画参加有り難うございました!楽しんでいただければ嬉しいです。 ヤマネコ ※ブラウザバックでお戻りください。 |