04

忍たまを養い隊!

※※※保健委員会のバヤイ
夢主(働きマン)伊作お兄ちゃんはお医者さんの卵。乱太郎&伏木蔵は小学校二年生。左近が小学校六年生。数馬中学校一年生。


男女平等のこの時代。女が男より仕事が出来てなにがいけない?女が"男たち"を養ってなにが悪いの?


「誕生日プレゼントを買いに行きます!」


「えぇ?」


私の唐突な言葉に、シチューの入ったお鍋を慎重に運んでいた伊作兄ちゃんが首をかしげた。


「誕生日?」


「プレゼント?」


お皿やらスプーンやらをテーブルに運んでいた左近と数馬も、伊作兄ちゃんと同じように首をかしげた。


「あ!乱太郎麦茶こぼれてる…」


「え?ひゃあぁ!」


「あー…ほいほい乱ちゃん」


ふきんで乱ちゃんの服を拭ってやれば、乱ちゃんはくすぐったそうに身をよじって笑った。


「お姉ちゃんくすぐったい」


「我慢我慢。ほら左近や、はやく鍋敷き敷かないと伊作兄ちゃんいつ鍋ひっくり返すかとわかんないぞ?」


「わわわ」


「ひっくり返さないよ!」


サッと素晴らしい速さで鍋敷きを敷いた左近に、伊作兄ちゃんは心外だと怒鳴った。


「はーいじゃあ席ついてー。ご飯たべながら希望を聞くからねー」


「はいお姉ちゃん」


「ありがとー数馬」


「いーえー」


「久しぶりにはやく帰ってきたと思ったら、その話をするためなの?」


眉をゆがませて首を傾げる伊作兄ちゃんに、私はスプーンでシチューをすくいながら答える。


「うん。あ、美味しい」


「まだいただきます言ってない行儀悪い!」


「悪かった悪かった…そんなに睨まんで」


「…」


「すみませんでした左近さん」


「わかればいい」


「お姉ちゃん…誕生日プレゼントって誰にあげるの?」


スプーンを口に運びながらこてっと首をかしげる伏ちゃんに、私はにーっと笑顔を浮かべる。


「あんた達に決まってるじゃない」


「「「「「えっ!」」」」」


「いやー良いわ、その驚いた表情」


「で、でも!」


数馬が焦ったような戸惑ったような表情で身を乗り出す。


「5人だよ?5人もいるんだよ僕たち」


「知ってるよ?お姉ちゃんだもん」


「お金とか…掛かるよ…」


乱ちゃんが伏し目がちに言うのをみて、左近もぷいっと顔を背ける。


「僕は誕生日プレゼントって歳でもないし。要らないよ」


「左近ったら…いいのよ!本当は新しいお鍋ほしいんでしょ」


「なっ…ほ、ほしくない!」


「乱ちゃんは色鉛筆と新しいシューズで迷っちゃうかなぁ」


「えっ…」


「ふふふ。今までお姉ちゃん、ちゃんと誕生日プレゼント用意出来なかったからね!任せなさい!」


胸を叩いてみせると、伏ちゃんと乱ちゃんと数馬が嬉しそう笑いあう。左近もムスッとしながらも嬉しそうにみえた。


「さー希望を言いなさい!お姉ちゃんに任せなさい!」


「じゃあ、僕シューズがいい!」


「僕は…えーと、えーと、」


「焦んなくても良いよ伏ちゃん。あ、そーだ!雑渡さんのパペット作ってあげよっか?」


「わぁ!すごいスリル…」


「嬉しいってことね?」


きゃいきゃい嬉しそうな伏木蔵と乱太郎。そこまで喜んでくれるとこちらとしてもなんだか嬉しい。続いて数馬と左近に視線をうつす。


「左近には新しいお鍋買ってあげようね。友達がすごく良い食器が売ってるところがあるっていうから」


「う、うん」


ちら、ちら、と右から左へ視線を移動させて、左近は私を窺うように見上げるとぼそりとつぶやいた。


「…ありがと、お姉ちゃん」


「もうティファールの買ってあげちゃおうかな…」


ありがとう、デレ期。
二万ちょいくらい軽い…軽い…も、もがくように働いてるんだぞこっちは。


「数馬は?なにがほしい?」


「ええっ!い、いや、僕はいいよ…!」


「私が好きで買ってあげたいだけだから、お姉ちゃんに遠慮しなくてもいいでしょ」


「う…えっと…」


左近みたい視線を右往左往させて、数馬はやがて観念したように私を見ながら口を開いた。


「お揃いの…やつ」


「え?」


「みんなで、なんでもいいからお揃いのやつ…ほしいな」


「…」


なにここ?楽園?楽園ここ?
いいねーと微笑む乱ちゃんに照れくさそうに微笑み返す数馬。今すぐ飛びつきたい衝動を必死に押さえて、私はみんなの希望を繰り返した。


「乱ちゃんがシューズで、伏ちゃんが雑渡パペット、左近が新しいお鍋で、数馬がなにかお揃いの…と。よし、伊作兄ちゃんは?」


「へぁ?」


なにやらシチューのじゃがいもと格闘していた伊作兄ちゃんが、間抜けな声を出しながら顔を上げた。


「えっ。なに?僕もなの?」


「当たり前でしょうよ」


「いやだって、僕お兄ちゃんだし!そんな、むしろこっちがプレゼント買ってあげたいから!」


「伊作兄ちゃんそんな暇無いでしょうに」


「う…」


お医者さんの卵である伊作兄ちゃんはお医者さんの新野先生のところで住み込みで働いている。でも毎日夜ご飯を食べる時間に一時的に必ず、家に帰ってくるのだ。


「私はいいよ、伊作兄ちゃんがこうやって顔見せてくれるだけで。で、なにがほしい?」


「うーん…」


腕を組んで考え込む伊作兄ちゃんはきっと、ぐるぐるとどうしたら私が納得して負担が掛からないか考えているのだろう。


伊作兄ちゃんはそういう人だ。


「あ!じゃあこうしよう!」


パチンと指を鳴らして伊作兄ちゃんはみんなに微笑んだ。


「みんなで遊びにいこう!」



保健委員会を養い隊!
(おおー!じゃあ休み合わせよう伊作兄ちゃん!)(久し振りにみんなで遊びにいけるね伏木蔵!)(すごいスリルー)(楽しみだね、左近)(ぼ、僕はべつに!)(よーし!じゃあ行くところ決め…ガシャーン!)(あー伊作兄ちゃんシチューひっくり返した…)

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