07

※ホラーネタで、ほんのちょっとだけグロが入っています。嫌な予感がしたら逃げてください。


忍たまを養い隊!


※※※学級委員会のバヤイ


男女平等のこの時代。女が男より仕事が出来てなにがいけない?女が"男たち"を養ってなにが悪いの?


「百物語を、します」


やっと仕事が終わり、ヘロヘロになりながらも迎えてくれたちび二人に「はやく寝なさいよー」笑みを返して。勘ちゃんが作りおいてくれたご飯を詰め込んで、仮眠のつもりでゴロンと自分のベッドに潜って約10分。


いきなり私の部屋に乗り込んできた三郎が、にやりと笑いながらそう言ってのけた。


「…三郎、もう遅いんだからはやく寝なさいよ。あんたが起きてるからちび二人が寝られないんだからね?あ、20分くらいしたら起こして」


早口でそう告げて、三郎にぐるんと背を向ける。ああ全く、私は疲れてるんだ。ちょっとくらい寝かせ…


「百物語をします」


「…」


目を開けると、逆さまになった三郎の顔があった。私のベッドにまで乗り込んで顔を覗き込んできやがる。


「百物語を…」


「しつけぇよ!お前は百物語の宣伝部長か!?私寝たいんだよ三郎…あんた明日…」


「創立記念日でっす」


「学生うぜぇ…」


「あー三郎何してるの?」


ひょこっと部屋のドアから現れたのは勘ちゃんだった。不思議な前髪をぴょこぴょこしながら部屋に入ってくる。


「要ちゃん具合悪いの?」


「三郎が頭の病気です」


「ひでぇ!」


「あ、あれ言ったの?もしかして」


「うん。百物語」


「をいをいお前らグルかよ…勘弁してよ…あんたら組むとロクなことが無いじゃないの…」


「えーやろうよ要ちゃん」


勘ちゃんまで私の腕を引っ張ってくる。いい加減寝ようぜ高校生…小学生二人はもう大人しく…


「なにしてるんですか?」


「うるさくて寝られない…」


寝ていなかった。


「ほらお前らのせいだかんな!ごめんねー庄ちゃん、彦ちゃん。この阿呆どものせいで…」


「庄左ヱ門、ひこしろ!百物語しよう!」


「ちっとでいいから話聞いてくれない?」


「三郎兄さん、百物語ってなんですか?」


ぴ、と空気の読めるよい子な庄ちゃんが手を上げて質問する。三郎がにやにやとそれに答える。


「みんなでなー?たーくさん怖い話をして、蝋燭を消していくんだ。百話目話し終えると…ワアアアア!」


「ひゃああああ!?」


「あーうちの子はノリの良い子ばっかね…。ほーら彦ちゃんおいで」


「お、お姉ちゃ…!」


飛び込んできた彦ちゃんを抱き上げて膝に乗せる。するとなにやら腕を組んで、眉を寄せる庄ちゃん。ほーら見やがれ彦ちゃん泣かすから庄ちゃん怒っちゃっただろ!


「でも兄さん…蝋燭百本もうちにはありませんよ?」


「庄ちゃんたら…相変わらず冷静ね」


「じゃー1人三話くらいで良いんじゃない?」


「適当だな!」


ケラケラと笑う勘ちゃんがなぜか私のクッションをずるずる引きずってきて、ストンとそこに座った。


「よーし、じゃあ始めよう」


「はい?」


「百物語」


「え?なに?私の部屋で?」


「あ、じゃあお菓子持ってくるわ」


「三郎こら居座らない!わかったわかった!とっとと終わらせよう!」


その言葉に素早く反応した三郎さんがどこからともなく懐中電灯を取り出した。私は諦めた顔で彦ちゃんを膝に置いたまま、話をする体制を取った。


庄ちゃんも私の横にちょこんと座って、三郎と勘ちゃんはそれに対になるように座る。ややあって、三郎から懐中電灯を引ったくった勘ちゃんが重く口を開いた。


「とある家族がさ、新しくアパートに引っ越してきたんだ」


そんな感じの切り口で、勘ちゃんが真剣な表情で怪談話を紡いでいく。いつもにこにこと天真爛漫な勘ちゃんが真剣な顔をすると、なんというか迫力がものすごい。


いつの間にか、私は彦ちゃんを抱きしめる力を少し強めて、話に聞き入っていた。


「でね、他に目立ったのはその家の台所でさ、毎晩毎晩皿が割れるんだよ」


パリン


「え?」


勘ちゃんが重苦しい表情でそう言った瞬間。私の耳がかすかに何かが割れる音を捕らえた。


「それでさ…」


「ち、ちょっとタイム!」


「ん?」


真剣な表情から一変して、勘ちゃんがキョトンと首をひねる。三郎も怪訝そうな顔をして私を見上げた。


「どうした#name1#」


「いや…あの…今、パリンって音しなかった?」


「え?」


さらにキョトンとした表情をするのは庄ちゃんと彦ちゃんだ。2人の反応をみて、ひや、と背中に氷を入れられたような感覚に陥る。


「なにも音しませんでしたよ?ね、彦四郎」


「う、うん」


「え…でも今…」


「やだなー要ちゃんったら、俺らを怖がらせようと?」


「ちょーっと爪が甘いな?」


ケラケラと笑う勘ちゃんに、私の頬をつねりながら意地悪い笑みを浮かべる三郎。庄ちゃんは冷静に「なんだ冗談か」と判断したらしく、勘ちゃんに続きを促した。


勘ちゃんは笑うのを止めるとまた続きを話し出したが、私はさっきのなにかが割れる音が耳にこびり付いて離れない。


パリンって、いったよね?


「……今もどこかにあるらしいよ?その幽霊マンション」


そう締めくくって、勘ちゃんはふざけたようにふーっと蝋燭のように懐中電灯に息を吹きかけ、灯りを消した。真っ暗になった部屋に彦ちゃんがビクッとすくんだのがわかり、勘ちゃんもわかっていたのかすぐ灯りがつく。


「なかなかだったでしょー?」


「ああ、なかなかだった」


「なかなか怖かったですね」


「庄ちゃんや、真顔で言われてもね…」


苦笑する勘ちゃんが三郎に懐中電灯を回した。三郎は笑っていた顔を引っ込め、真剣な表情で口をひらく。


「じゃあ、話すな?」


なんだこいつら恐すぎる。



続きます。

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