06

忍たまを養い隊!

男女平等のこの時代。女が男より仕事が出来てなにがいけない?女が"男たち"を養ってなにが悪いの?


「お姉ちゃん」


「ん?」


聞いてください。数日前ぐらいから、私の家族の様子がおかしいんです。


この子。ぱっつん前髪の私の弟。双子の片割れ、兵太夫。私がソファに座った途端、にこにこと笑顔を浮かべながら、私の肩に手を置いた。


「兵太夫?」


「マッサージしてあげる」


「え?」


「お仕事、大変だったでしょ?」


ぶわっと涙が目に溜まるのがわかった。それを拭いながら「じゃあお願いしようかな!」と姿勢を正した。すると兵太夫が肩もみを始めた瞬間。リビングの扉がばたんと開く。


「兵太夫!抜け駆けだぞ!」


「知らなーい」


「兵太夫!」


「え?なに?え?」


飛び込んできたのは双子のもう片割れ、伝七だった。私はぱちくりと目を瞬かせて伝七を見る。


「お姉ちゃん!」


「は、はい」


「僕にしてほしいこと、ない?」


「してほしいこと…?」


「そう!」


なんなんだ2人して…と理由を尋ねたかったが、伝七の目が今までにないくらい真剣味を帯びていて、燃えている。私は気圧されながら、視線を巡らせる。


「え、えっと…」


「お姉ちゃん」


「あ、藤内。宿題終わったの?」


救いだ!と藤内の振り向くが、藤内も様子が変だ。と直感的に気がつく。笑顔が嘘っぽい!なんか!仙兄ちゃんみたいに!ついでに言えば兵太夫にも似てる!


「藤内…?」


「なぁに、お姉ちゃん」


にこにこと兵太夫のように微笑みながら藤内がスッと私の横に座る。な、なんだ?なんなんだ?


「な、なんかみんな変だなー?なにか…い、良いことでもあったのかなー?」


「そんなことないよー?」


兵太夫が私の首に手を回してじゃれつく。肩もみはどうした兵太夫。


「お姉ちゃん、今日僕と一緒にお風呂はいろ?」


「え?」


「で、伝七っ…」


今までにこにこと微笑んでいた藤内の表情が崩れた。伝七がしてやってりという顔で私の手を掴んだまま笑う。


「僕はまだ小学生だから、問題ないですー」


「…ずるい」


「ちょっとちょっと三人とも!話が見えないよ?一体なにが…」


「おなかすいたー」


またリビングの扉が開いて、今度は喜八郎顔を出した。穴掘りの気が済んだらしい、愛用のスコップは玄関に置いてきたんだろう。


「なにしてんの?」


「喜八郎!みんななんかおかしいのよ!」


「…あーそっか。すっかり忘れてた」


「え?」


喜八郎はつかつかと私の元へ歩み寄ると、私の膝元にいた伝七をひょいと私の隣に座らせた。そして、なんの前触れもなく文字通りぎゅ、っと私を抱きしめる。


「え?え?」


「お姉ちゃん、大好き」


「はいいい!?」


前から脈絡のない弟だとは思ってたけど、さすがにこれは脈絡が無さ過ぎる。私はぱくぱくと口を魚のように動かして、言葉を探すが、見つからない。


「ちゅー…は昔はよくしてたけど、さすがに今は恥ずかしいね」


「き、きは、喜八郎!?意味がわからな過ぎるんだけど!?」


「好き、お姉ちゃん」


「だ、だから!意味が!」


「喜八郎兄ちゃん!ずるい!」


「兵太夫も引っ付いてるからいいんじゃない?」


「よくない!」


「ただいまー」


またまたリビングの扉が開き、今度は仙兄ちゃんが現れた。そして私たちを見るなり、仙兄ちゃんがにやりと笑う。


「なんだ。抜け駆けか?お前たち」


「先に兵太夫が抜け駆けしたんだよ!」


「伝七だって便乗したくせに」


「うっ…」


「伝七、一緒にお風呂はさすがにずるい」


伝七が兵太夫を睨み、兵太夫は素知らぬ顔。藤内は赤くなった顔で伝七を睨んでいる。


「な、なんなの?……あ!みんな何か悪いことしたんでしょう!」


私の言葉に仙兄ちゃんが吹き出す。あれ、違うのか。


「違う違う、さぁお前たち手を洗ってこい。準備するぞ」


その言葉にさっきまでのが嘘のようにみんなパッと私から離れると、洗面所に走り出した。私がそれを唖然として見送っていると、仙兄ちゃんが笑いながら種を明かしてくれた。


「お前、仕事で責任者を任されたって喜んでたろう。藤内がなにかお祝いしたいって言い出してな。そしたら兵太夫と伝七が競い合いを始めた」


どっちが私を"喜ばせばられるか"


「面白そうだったからな、みんなで競争ということにしたんだ」


「…仙兄ちゃん…あんたって男は!」


ぽかすかと仙兄ちゃんに制裁を加えると、仙兄ちゃんは私の両腕を捕まえてにこっと微笑んだ。


「まぁどうせ、私の勝ちだろう。昔から、私に褒められるのが好きだったからな?お前は」


「え?」


「おめでとう、よく頑張ったな。偉いぞ?」


「…」


かあぁと集まる熱に、昔からなかなか褒めらない仙兄ちゃんに褒められると、嬉しくて顔を真っ赤にしていたことを思い出した。


「適わないな、全く」



作法委員会を養い隊!
(お姉ちゃん!僕も大好きだからね!)(うん、ありがとう兵太夫)(い、一緒に寝てあげてもいいよ?)(伝七っ!)(こらこら藤内藤内。はいはいありがとうねー)(お姉ちゃん、グラタン食べたい)(はいはい今度ねー喜八郎)(だいぶスルーが上手くなったな、お前は)(あんたらのお陰だよちくしょう)

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