3人の太陽

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「しょーろっぽ♪はぽー♪しゅーりけんっ♪」


「しょーろっぽ♪はぽー♪やーぶれ♪」


スキップでもしてしまいそうな軽い足取りで、前2人は元気良く土を踏みしめる。しんべヱくんも僕の背中でふんふんと楽しそうにリズムを取っていた。


「森が浅くなってきましたね!もう少しかな」


「うん、そうだと思うよ」


「やー…一時はどうなるかと思ったけど要先輩のお陰で助かったぁ」


「これに懲りたら勝手に人の山の山菜取らないの!わかったきりちゃん!?」


「はいはーい」


「なんだきり丸、山菜が欲しかったの?なら今度、僕とまたこの山に来ようか」


「へ?」


キョトンと足を止めて僕を見上げるきり丸に、僕も足を止めてよいしょとしんべヱくんを背負いなおした。


「また地主さんを手伝えば、お礼に山菜分けてもらえるよ?今日は断ってきたんだけど…」


「ええっ勿体無い!!」


「まぁ結果として山菜放置で逃げることにはならなかったんだから」


そう苦笑すれば、パッと手を上げて乱太郎くんが「僕も手伝います!」と名乗りを上げてくれた。


「僕も僕もー!おばちゃんに山菜持っていって、山菜ごはんにしてもらうー!」


「駄目だっつのしんべヱ!全部売るんだから!!」


「えぇー?」


「ふふ、じゃあみんなで行こうか………!」


直感、いや直感じゃない。


"感じる" "居る" "来る"


僕はしんべヱくんを左手で支え、きり丸と乱太郎くんの後ろ首を右腕で攫った。突然の僕の行動に2人が驚いて声を上げたが、僕は静かに、でも届く音で囁いた。


「だれかくる、あの茂みに走るよ」


ガサササ、と葉が僕たちの頬に乱暴に触れ、その間に身を隠す。乱太郎くんたちが首をかしげて体制を低くしたのを確認すると、僕もしんべヱくんをゆっくり下ろして抱きかかえた。


「一体どうしたんスか…?要先輩」


「しっ、」


唇に指を置いた刹那、ザザザッとなにかが移動する音が耳に届いた。その音は乱太郎くんたちにも届いたようで、ビクッと身を固くしたのがわかった。


「いたか!?」


「いや、いねぇ…しかし、あの地図が餓鬼どもが落としたってのは確かなのかよ?」


「仕方ねぇだろ、お頭がそう言うんだから」


―――――…地図!
サッと自分の顔から血の気が引いて、嫌な汗が浮かぶのがわかった。あの山賊たち、僕が落とした地図を拾ったのか。


「(しかも…)」


あれが僕たちが落としたものだと目星をつけてる。最悪なのは、それが事実だってことだ。


怯えたように震える乱太郎くんの手を、山賊たちを睨みつけるきり丸がギュッと勇気づけるように握ったのが視界に入った。


「(――――…落ち着け、焦っちゃ駄目だ)」


せめてこの子たちだけでもこの山から出さなくては。しんべヱくんは怪我もしていて、体力の消耗も激しい。はやく先生に処置してもらわないと。


「この道を行けば山から出られる。塞いじまうぞ、二手に別れよう」


「おう」


そう言って数人の男たちは二手に別れ、木々のなかに去って行った。ひとまず見つからなかったことに安堵の息を吐いて、しんべヱくんを座らせる。


「しんべヱくん、足は痛む?」


「大丈夫ですよ!」


「ごめんね、いきなり草むらに飛び込んだりして」


そして困ったように苦笑して、乱太郎くんときり丸の頭に手を置いた。


「ごめんね、」


僕が地図を落とした。完全に僕の過失だ。僕が地図を落とさなければ、今ごろ無事に山を降りていたのに。


「大丈夫、君たちだけでも山から出して…」


「要先輩っ!!」


突然きり丸が僕の腕を押さえて怒鳴った。びっくりして目を瞬かせる僕に、きり丸は今にも噛みついてきそうな剣幕で怒鳴り続ける。


「要先輩のせいじゃありません!要先輩が1人で謝って背負って責任取ることじゃありませんから!」


「きり丸…」


「俺も悪かったです、これで良いんです、わかりました!?」


「う、うん」


ふんっと背を向けてきり丸は草むらから顔を出し、山賊たちがいないかキョロキョロと警戒を始めた。僕はたまらなくなってその背中に抱きつく。


「わひゃ!?」


「ありがとう!きり丸!」


「なにするんスか!離れてください!俺怒ってるんですからね!?」


「うん、ごめん、えへへ」


「全く、要先輩もきり丸も…はいはい!やめてください!で、どうしましょう要先輩」


眉を下げる乱太郎くんに僕は腕を組んだ。相手の数はざっと5〜6人といったところ、この山の地形はほとんどわからない。登ったときの記憶があるだけだ。


「(向こうはこの山には詳しいみたいだし…道という道は塞がれてるんだろうな…かといって獣道は見つかったときのリスクが大きすぎる)」


「乱太郎、きり丸、僕たちも考えよ!山を出る良い方法!」


「うん!要先輩だけに負担かけるわけにいかないもんね!」


「とは言っても、山の道という道はきっと塞がれちまってるし、この山来たのってほとんど初めてだろ?地形もわかんないぜ?」


「うーん…そうだよなぁ」


「あっ!要先輩!さっきの煙玉、もう持ってないんですか!?」


「え?」


しんべヱくんの言葉に腕を組んで考え込んでいた僕は、ハッと我に返って首を傾げる。


「煙玉?ああ、えっと…」


ごそごそと懐を漁って、小さな玉をころりと手に転がす。ピンポン玉くらいの大きさの煙魂が2つ出てきた。5つ持っていたのだが、3つはさっき使ってしまった。


「2つ、あるよ」


「2つで誤魔化せるかなぁ、きり丸」


「なんとかなるだろ?なぁ、乱太郎?」


「あとは工夫じゃない?ね、要先輩」


「もしかして…ええと、もしかしてなんだけどさ」


3人は元気良く、闇を暗雲を不幸を不運を、全て吹き飛ばすような笑顔で拳を天高く突き上げた。


「「「山賊たちを強行突破しましょーう!!!」」」



もう少し続きます。

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