無自覚かくれんぼ

※久作、四郎兵衛を名前呼び。

お前ら!迷子になって怪我したんだって!?


ああもうなんともないじゃねーよ!心配かけやがって!ほら!これやる!


絶対に肌身離さず持ってろよ!


      *
      *
      *






「左門と三之助がまた居なくなった…!午後授業ないだろ!?助けてくれぇえ…」


と、作兵衛に泣きつかれたのは食堂でのことだった。隣で一緒に食事をしていた孫兵と藤内を視線をやると、2人とも姿を忽然と消していた。


「…」


「頼む!要!」


「いや、そんなに頭さげなくても手伝ってあげるけど…あいつら…逃げやがった…」


「要ー!」


「おお、よしよし…」


僕の胸で男泣きする作兵衛の体は泥だらけだった。全くあの2人は。


「作兵衛、」


「っず、…ん?」


鼻を啜りながら顔上げた作兵衛の前に、箸を突き出す。きょとんとした表情の作兵衛に、僕はにっこりと微笑んだ。


「ごめんね、もうこれしか残ってないんけど。はい、あーん」


「あー?」


ぱくんと口に入ったものをもぐもぐ噛みながら、意図がわからないというように作兵衛が首をかしげる。


「今日のね、カボチャの煮物。甘くて美味しいよ。お昼ご飯、食べてないんでしょ」


「…うわぁああん!要ー!」


「はいはい。よし行こう!」



※※※


「そういえば…次屋先輩、昨日の委員会のときになにか落としたかも…って呟いてましたぁ…」


「本当か時友!?」


「四郎兵衛、間違いないのか?」


食い付く作兵衛に、四郎兵衛の隣いた久作が再度確認すれば、四郎兵衛は思い出すような仕草をして頷いた。


「うん…昨日裏裏裏山までランニングに行ったとき、次屋先輩が迷子になって…僕と滝夜叉丸先輩とで探して、無事保護したんですけど…井戸で水を飲んでるときに…」


"あれ?あれ?"


"どうしたんですか?次屋先輩"


"いや…部屋で落としたのかも…なんでもない、先戻るな四郎兵衛"


「って…なんだか困ったような表情で部屋に戻っていきましたよ?」


「…どういうことだろう要」


「たぶん、部屋にその落とし物が無かったんだと思う。それで午後に授業が無いのを狙って…」


「まさか!?裏裏裏山に!?」


「事務員さんに確かめてこよう、作兵衛。有難うね、久作、四郎兵衛」


「あ、あの要先輩!」


踵を返そうとした僕の手を、久作の手が掴んで止めた。


「?久作?」


「僕も一緒に探します!」


「え?」


「僕もいきます…!次屋先輩を放っておけませんから…」


「、ばかやろ!」


「「わぁ!?」」


がし、と作兵衛が四郎兵衛と久作の頭を頭巾から掴んでわしゃわしゃ撫でた。


「心配すんな。お前らは午後の授業もあるし、昼飯もまだだろ」


「で、でも」


「有難う久作。気持ちだけもらっておくね」


「要先輩…」


「大丈夫大丈夫。何てったって、迷子探しのプロがここにいるんだから」


「そうそう俺こそが…って、そんなんじゃねぇよ!要までなに言いやがる!」


「今日のB定食のカボチャの煮物。美味しいよ。食べといで」


久作と四郎兵衛は不服そうな顔をしていたが、失礼しますと頭を下げて食堂に走って行った。


「作ったら格好いいね。惚れ直すかと思った」


「ばっ…ばかいうな!ああでも言わないとあいつら行かないだろ!」


「さてじゃあいくか!」


「要!聞けよ!要!」


※※※



「え?神崎左門くんと次屋三之助くん?ええ、外出届が出てるわよ」


「やっぱり…」


「あああもうなんで一言俺に相談してから行かねえんだ!あの馬鹿どもぉ!」


「あなた達も外出するの?なら、外出届出しといてあげるわよ」


「えっ。いいんですか?」


「要くん。たまーにおばちゃんのお掃除手伝ってくれるでしょ。お礼よ」


「あー…たまたまですよたまたま…」


というかあれはおばちゃんの笑顔の訴えというかなんというか…。


「それに、急ぐんでしょ」


おばちゃんのウィンクを受け、僕たちは弾かれるように「有難うございます!」と言って門から飛び出した。




おばちゃんテライケメン。
お節介焼きのところには自然と仕事が回ってくるというわけです。続きます。

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