はじめまして、後輩さん

「え?図書委員会に一年生、入ることになったんですか?」


「うん。能勢 久作くんっていう子がね」


能勢 久作くん。
僕の"前の記憶"には引っかからなかった。まだ乱太郎とかしんべヱとか主要層は出てこないみたいだ。


「六年生が卒業されて、中在家先輩と雷蔵先輩と僕だけになったから、寂しかったんです。良かったですね!」


「そうだね。僕は毎日、要と当番するの好きだけど…大変だもんね」


「えっ」


なんでこの雷蔵先輩も鉢屋先輩も、顔から火が出るようなことをさらりと言ってのけるんだ…!


「あ、えと…僕も、雷蔵先輩…好きです…」


「ん?僕との当番じゃなくて、僕が好きなの?」


「!」


日 本 語 !
日本語話せてないよ!


「先輩!鉢屋先輩でしょう!ま、また僕をからかって!」


「あはは、真っ赤になっちゃって。よしよし、僕は本物の不破 雷蔵。可愛いなぁ要は」


「雷蔵先輩までそういうこと…やめて下さいよ…」


「こんにちは!」


撫でられ体制のまま、戸口をみると一年生の制服をきた忍たまがひょこっと現れた。


「はい、こんにちは。なにかご用かな?」


「僕、能勢 久作といいます。図書委員会に入ることになったので、仕事を教えてもらおうと思って」


「え?でも一年生の委員会活動は来週からじゃあ…」


にこやかに対応した雷蔵先輩とうろたえる僕に、能勢くんは「いいえ」と真面目な顔で返した。


「来週、いきなり委員会の仕事をしたって、足手まといになるだけです。ですから今日少しでも教えていただければ…と…」


すらすらと滑舌良くそう述べた能勢くんだったが、急に我に帰ったように少し俯いて僕たちを窺った。


「ご迷惑…ですか?」


「全然!」


答えたのは僕だった。雷蔵先輩もそれに頷く。


「すごく助かります。僕は二年い組の一ノ瀬 要」


「四年ろ組、不破 雷蔵です。よろしくね」


「はい!一年い組の能勢 久作です!」


おおう初々しい。新鮮だなぁとか訳の分からない感想を抱いて、僕は能勢くんを招き入れた。


「じゃあ僕は貸し出し返却受け付けをしているから、要は一通りのこと、能勢くんに教えてあげてね」


「ええっ。僕がですか!?」


突然の指名に肩が飛び上がる。たくさん当番をして図書委員会の仕事は覚えたけれど、教えるとなるとやり方が違う。


「ほら、頑張ってね。要先輩」


「ら、雷蔵先輩!」


「すーぐ顔に出るんだから。ほらほら後輩の前だよ。シャッキリして」


「は、い…。じゃ、じゃあおいで能勢くん」


「はい一ノ瀬先輩!」


「ひぃ」


「?一ノ瀬先輩?」


「や、いや…なんでも」


"僕は先輩になるんだな!"


そう言ってにこにこしていた左門をみたのはいつのことだったか。


「図書委員会はね貸し出し返却受け付けだけじゃなくて、新刊の注文や図書整理や本の修繕なんかもやるんだ」


その都度教えるね、と言えば能勢くんはまたいい返事を返してくれた。


「雷蔵先輩が返却受け付けした本や資料は、あの横の棚に積まれるから、それを…よいしょ」


棚から何冊か持って、久作くんにも二冊ほど持ってもらう。


「本を戻す前に、汚れか破れているところがないか確認してね」


「はい!」


あまりに熱心に聞いてくれるものだから、僕も一生懸命に教える。久作くん真面目さんだ!


「で!中在家先輩からの必ず守らなくてならないお約束!」


「はい!」


「本に触るときは必ず手を洗うこと!」


「はい!それは図書委員会も例外では無いのですね!」


「無いのです!」


「わかりました!」


「あと私語厳禁!図書室で騒ぐなんて言語道断だからね!いまはいないけど中在家先輩から罰が下るから!」


「無論ですね!」


「ぶはあははははははは!」


「「?」」


は、とお互い我に帰った久作くんと振り向けば会いたくない人ナンバーワンがいた。


「げ。鉢屋先輩こんにちは…」


「げ。とはなんだ、げ。とは」


「わああ!?やめてください鉢屋先輩!」


ぐりぐりの胸を押し付けられた上、わしゃわしゃと頭巾から頭を撫で回されて、暴れるが鉢屋先輩はビクともしない。


「ははは要ー?お前は小さいなー?」


「っぐ、それは今は関係ないでしょう!」


「んーいい位置いい位置」


「!は、鉢屋 三郎先輩!」


ぐ、と鉢屋先輩の忍び服が引っ張られ、それをしたのは能勢くんだった。


「能勢くん…?」


「止めてください!図書室では"私語厳禁"です!"騒ぐなんて言語道断"ですよ!」


「!能勢くん…!」


呆けている鉢屋先輩から抜け出して、僕は思わず能勢くんの手を握ってしまった。


「ありがとう…!」


「えっ…あのっ…」


「僕が鉢屋先輩に意地悪されてて、こんなに熱心に助けてくれたのは君が初めて…!」


鉢屋 三郎だから仕方ない効果に乗っ取って、鉢屋先輩はなにかと僕に意地悪する。会うたび会うたびにだ。


「と、当然です!僕は図書委員会ですから!」


「能勢くん…!」


「ねーねー雷蔵。なにあれ可愛い。もらっていい?」


「三郎黙ろう?」



要くんは意地悪がどういうものか多分よくわかってない。年上に囲まれてきたからね。

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