刹那きらりと光った。(※ここから二年生篇)

「ふんふっふー!」


「…偉くご機嫌だね左門」


「まぁな!」


夕ご飯が終わっていきなり僕に部屋に押しかけてきて、ずっとこの調子だ。孫兵はお風呂に行ってしまったし、僕は宿題をしているけれど腰に巻きついて顔を背中に擦り寄せてこられては、集中できない。


「くすぐったいよ左門」


「えへ!」


「可愛い子ぶって…」


「だってだって要!後輩が入るんだぞ!?」


「ああ…」


左門がこんなにそわそわしてるのはそのせいか。僕は筆を置いて、左門に向き合う。


「僕は先輩になるんだな!」


「そうだね」


「要も先輩になるんだな!」


「うん。みんなでね」


「うわあー!どうしよう!僕、後輩になにしたらいいんだ!?」


にこにこ話していたと思ったら、途端に顔をしかめて慌て出す左門に思わず吹き出してしまった。


「要!笑い事じゃないぞ!僕たちは先輩になるんだから!」


「はは…ごめん。真面目に考えるよ」


「僕も考える!」


うーん。


「特に思い付かないね」


「特に思い付かないな!」


「でもそうかぁ…もう一年も経つんだなぁ」


思い出せば昨日のことのようだ…っていうとさすがにあれだけど。ていうか主に鉢屋先輩に意地悪された記憶しかないのは、僕の気のせいだろうか。


「後輩が会計委員会に入ったら帳簿の記帳の仕方を教えてあげるんだ!」


「わぁ、左門が?」


「うん!」


「図書委員会に入ってくれたら僕も楽になるかなぁ」


「きっとなるぞ!みんなで助け合うのが委員会だからな!」


「…そうだね」


ぎゅう、と左門を抱きしめる。左門は「わぁ!?」と声をあげたが、左門にしては珍しく大人しく抱きしめられていた。


「左門は良いことを言うね」


「ほんとか?」


「後輩がもし困ってたら、そう言って助けてあげなよ。それがきっと先輩ってやつだよ」


「!そうだな!要もすごく良いことを言うな!」


「そう?」


「うん」


遠くで、左門を呼ぶ作兵衛の声が聞こえた。





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