後ろの正面だぁれ?

「ここだよ」


「あ、ほんとだ。すみません、ありがとうございます」


「ううん、いいよ。さ、入ろうか」


からからと木戸を開けてもらい、中に入れば――


「あれ、三郎」


不破 雷蔵先輩が受け付けに座っていた。


「らいぞー…せんぱ…?」


「え?」


「え?」


「ぶっ、ははははは!」


突然、雷蔵先輩Aが笑い出した。今までの雷蔵先輩の優しい声音とは違うそれに、僕の肩がびくんと跳ねる。


「あ…の…」


「あー!三郎!なにも知らない一年生をからかったんだね!?」


雷蔵先輩Bはなにやらカンカンに怒った表情で、僕と雷蔵先輩Aを図書室の外へ連れ出す。


「わ、わ、!なんだよ雷蔵?」


「図書室では私語厳禁なの!それより三郎!お前はまた!」


「悪かったって。こーんな面白い反応されるとはさ。くく…」


意地の悪い笑みを浮かべて思い出し笑いをする雷蔵先輩Aに僕は、ただただポカンと見ていることしか出来なかった。


「ごめんね。僕が本物の不破 雷蔵。こいつは鉢屋 三郎っていうんだ」


「ら、雷蔵先輩Aが鉢屋先輩…?」


「あははははは!」


「三郎!笑わない!」


「あは、は、ひー…悪い悪い悪いってぇ…あーおかしい…」


目尻に浮かんだ涙を拭って、さっきとは違うにニッとした笑みを鉢屋先輩?が浮かんだ。


「私は鉢屋 三郎。変装の名人なんだ」


「自分で言ってるし…」


「まぁまぁいいじゃん雷蔵。いくぞ要。ほいっ」


「ふぁ!?」


くるんと鉢屋先輩が一回転すると、いつの間にか目の前には僕が立っていた。


「すごい…!すごいです鉢屋先輩…!」


「だろー?」


「あんまり褒めないでね、調子に乗るから…」


呆れたような視線を鉢屋先輩に向けて、本物の雷蔵先輩はにこ、と笑顔を浮かべてくれた。


「改めて、僕は不破 雷蔵です。きみは?」


「あ、一ノ瀬 要です。先生の資料を代わりに返却に来ました」


「そうだったんだ。じゃあ中に。三郎はもう行きなよ」


「なーんだよ冷たいな雷蔵」


「自業自得だろ。さ、おいで要くん」


「要?この私が直々について行ってやろう。また迷子になったら大変だものな?」


「あっ…わ、わかんなかっただけですから!僕は方向音痴じゃありません!」


「はははは、そーかそーか」


「鉢屋先輩!」


ほれほれ、と背中を押されて僕は反抗しようとした口をむ、と閉じた。


「はい、全て返却です。延滞もしてないね」


「ありがとうございます」


「こっちこそごめんね。三郎が迷惑かけて」


「いえ。あ、あの…」


「ん?」


「雷蔵先輩は、図書委員会なんですか?」


その言葉に、雷蔵先輩は笑顔で「そうだよ」と答えた。


「僕、図書委員会にはいります」


「え?」


「えー!?学級委員長委員会に誘おうと思ってたのに!」


「鉢屋先輩は意地悪するから嫌ですよ」


「言ったな?」


むにー、とほっぺを引っ張られ、「こら」と雷蔵先輩の咎める声がした。


「じゃあ待ってるね、要くん」


「!はい」


「ちぇー」





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