はじめまして、会えて嬉しいです。

「じゃあ左門は僕と手をつないで行きましょう?」


「え?」


赤毛の男の子、おそらく富松 作兵衛くんは目を丸くして僕をみつめる。


「手、つなぐの嫌なら強制はしませんけど…」


「つなぐ!」


左門が嬉しそうに僕の手を握る。


「僕は左門を見てますから、きみは次屋くんを見てたらいいんじゃないですか?」


「な、なるほど…」


「さて左門、忍者学園はこっちですよ」


「わかった!こっちだな!」


言うやいなや、僕が指差した方向とは逆に走り出す左門。ぐ、と手を引いて止め、ため息をついて言い方を変えた。


「左門、僕は歩くのが遅いので僕の歩調に合わせてくれませんか?」


「え?そうなの?うん!わかった!合わせる!」


すると、左門は僕の足をじぃいと見つめながら歩き始めた。


「すげえな…お前」


「僕の友達がドジっ子なので」


「俺らも行こう富松 作兵衛」


「お、おお。ってそっちじゃねぇ!もう俺に付いて来い!」


「要の手は冷たいな!」


「要、か…」


「はい?」


「お前も忍術学園に行くのか?」


「はい。はじめまして、一ノ瀬 要です」


「富松 作兵衛だ。作兵衛でいい」


「僕も要でいいですよ。よろしくお願いします」


微笑むと作兵衛はなにやらほ、とした表情で笑顔を見せてくれた。


「良かった…お前は方向音痴じゃ無いんだな」


「え?」


「こいつらさ、方向音痴なんだよ…会って忍術学園に入学する生徒だっていうから一緒に来たんだけど…」


「…」


方向音痴、じゃ片付けられない方向音痴だと思うけど、まぁいっか。


「作兵衛も大変ですね」


「敬語…」


「?」


作兵衛に着物の裾を掴まれながら歩いていた次屋くんはそうつぶやいて、不思議そうに首をひねった。


「なんで要は敬語なんだ?」


「ああ、そういえば。要いくつ?」


「十」


「なんだ、俺らと同い年じゃねえか。敬語、要らねえぞ」


「…う、ん」


「?どうした!?要!?おなかいたいのか!?」


顔覗き込んでくる左門に、僕は首を振って頬をかいた。


「僕、ずっとたくさんの年上に囲まれてたから。同い年の友達がいなくて」


「そっか!でもこれからは僕たちがいるぞ!」


「…うん」


照れくさくなって誤魔化すように微笑むと、作兵衛がハッと声を上げた。


「ああ!入学式!」





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