男女平等のこの時代。女が男より仕事が出来てなにがいけない?女が"男たち"を養ってなにが悪いの?


忍たまを養い隊!
※※※用具委員会のバヤイ


ただいまーと帰ってくれば小学生組三人がわらわらと寄ってきた。もう寝る時間だろうにと叱ろうとすれば押しつけられる藁半紙のプリント。


「ん…なに?」


「授業参観のお知らせ!」


「要ちゃん、僕ねぇナメクジさんの発表するんだよー」


「…僕も…地図かいたの…」


「あ、もうそんな時期かぁ…。ナメクジさんの発表ってどんなのよ喜三太。すごいね平太ー地図かぁ」


よしよしと2人の頭を撫でる。するとガッシャーンという音と共に留兄ちゃんの声が聞こえた。


「嫌だああ!全部行く!全部だ!」


「無理だよ!時間的にもほとんど被ってんだって!だから全部は…」


「でーもー見ーるーんーだー!」


「お、お二人さん。ただいま?」


「要姉ちゃん!」


リビングの部屋を開けて声をかければ、途端に作兵衛が飛び付いてきた。ひどく疲れきった顔の作兵衛に反射的によしよしと撫でる。


「なにがあったの作兵衛」


「留兄ちゃんが!しんべヱと喜三太と平太の授業全部みるってきかなくて!」


「え?でもあの子たち…」


「そう!あいつらみんな違うクラスなんだよ!発表も時間的に被るんだ!なのに全部回ってビデオに撮るとかさぁ!」


「…そりゃー無理だな留兄ちゃんよ…」


「いーや!出来るね!俺なら!」


「出来るわけないだろ!だから、俺その日部活休むから分担して…」


「作兵衛、いいか?よく聞け…?」


振り向く作兵衛の肩に手を置く留兄ちゃん。作兵衛は怪訝そうな顔をしながら留兄ちゃんを見上げる。


「すっげえ好きな番組を録画しようとするだろ?でもさ、どうしてもリアルタイムでも観たい。そういうのってないか?」


「あ、ある…けど…」


「だろ?だから!」


「いやだからじゃねーから留兄ちゃん」


「要!わかれよ!」


「わからんでもないが!そんなにバタバタしてたら他の親御さんに迷惑でしょうが!」


「…っ…正論を持ち出すとは卑怯だ!」


「あんたは欲に忠実過ぎんだよ…」


ジャケットを脱ぐのも忘れて言い合いをしていたことに気がつき、ひとまずジャケットを脱いで椅子に掛ける。


「あーとりあえず座りなよ」


「そうだよ留兄ちゃん、とりあえず座ってよ。姉ちゃん今帰ったばっかでご飯食べてねぇんだから!」


「え、あ、いやいいよいいよ」


「駄目!平太は茶碗にご飯!しんべヱと喜三太は姉ちゃんの鞄とジャケット!」


「「はぁい」」


ささっとしんべヱと喜三太がジャケットと鞄をさらっていく。平太もぱたぱたと作兵衛に着いていってご飯の準備を始めた。


「我が兄弟ながらなんて気の利く……」


「ぐぬぬぬ……なぜ俺の体はひとつしか無いのか……」


「怖ぇーよ留兄ちゃん」


「しんべヱの研究発表も、喜三太のなめくじレポートも、平太の地図も見たい……見て録画を……」


「留兄ちゃんって結構こういう行事ちゃんとするよね?好きなの?」


すると留兄ちゃんは俯いていた顔をパッと上げて、考えるように腕組みした。


「好きっていうか、喜ぶだろ、ちびたち」


「うん」


「ひなまつりとか七夕とかハロウィンとかクリスマスとか。あ、あと誕生日」


「うん」


「なんだろな、うん。あれだ、喜ぶだろ」


「うん……?」


首を傾げる私に、留兄ちゃんは「んー」と腕組みしたまま斜め上に視線をやる。そしてだいぶ昔のことを話し出した。


「俺がガキの頃さ、授業参観とか運動会とか親が仕事人間だから絶対に来ないだろ?だから嫌いだったんだよなぁ、楽しい行事のはずなのに」


「うん」


「だから作兵衛やちびたちにはそんな思いさせたくないな、ってさ。楽しい行事を楽しく出来ないのは嫌だろ?」


「………そうだね、でも」


私はテーブルに頬杖をついて、思い出しながら笑ってしまった。


「私は楽しかったよ、留兄ちゃん居てくれたし」


留兄ちゃんと同じように、私の運動会にもお母さんとお父さんは来てくれなかった。


「運動会は留兄ちゃんと留兄ちゃんのお友達とお弁当が食べられるから、すごく楽しみだったし。授業参観は留兄ちゃん走って迎えに来てくれたから」


妹の私に寂しい思いをさせまいと、留兄ちゃんは何度も何度も私のために無理をして、私のために走ってくれていたから。


「寂しくなかったなぁ」


「………うわ」


「ん?」


「要……」


「なに?」


「久しぶりに兄ちゃんと一緒のお布団で寝ようか」


「謹んでお断りします」


「「出来たよー!!」」


「はい……お姉ちゃん」


「ありがとう平太。美味しそうだね」


「はい姉ちゃん今日は唐揚げ!おらしんべヱつまみ食いすんな!」


「えーん」


「いいよーしんべヱ。はいあーん」


「ったく、姉ちゃんは甘いんだから……あ、で結局決まったの?授業参観」


「「あ」」


用具委員会を養い隊!
(だーから行けるっつてんだろ!)(だぁら無理だって言ってんでしょうが!)(あー……しんべヱ、平太、喜三太ー。今日は兄ちゃんとお風呂入ろうなー。いま姉ちゃんと留兄ちゃんは大事な話してっから)((はーい))(はーい…)


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