trick but treat!
2011/10/31 14:24

※吸血鬼パロ(現代)


夕陽が天窓からゆるやかに差し込む。開け放った窓から聞こえてくる部活動の声に耳を傾けつつ、僕は日誌にシャーペンを滑らせながら図書委員会の当番をしていた。


もうそろそろ上がっても良い頃かな。この日誌を書き終えたら上がろう。


そう考えながらさらさらとシャーペンを走らせる。


「失礼しまーす」


お客さんだ。


「お」


「あ、竹谷先輩。こんにちは」


「よぅ要」


片手を上げて竹谷先輩がカウンターに歩み寄る。僕は書きかけの図書委員会の日誌を閉じた。


「返却ですか?」


「ああ。要が薦めてくれた本すごい良かったぞ。おかげで作文が進んだ」


「あ、良かったー。ちょっと心配だったんです」


「うん。またなにかあったらお薦め頼むな。で、今日はちょっとハロウィンについての本を探してるんだ」


「ハロウィンですか」


何故だろう。僕がキョトンと首をかしげると、竹谷先輩が照れたように笑って種を明かす。


「実は今度生物委員会で仮装パーティーでもやろうかなって考えてるんだ。それで衣装を作りたいから参考になるものないかな」


「わぁ、良いですね!みんなきっと喜んでくれますよ」


微笑んでパソコンを立ち上げる。検索欄を呼び出しキーを打ち込みながら、僕は考えた。


「ハロウィンっていったらやっぱりジャックランタンですよね」


「ジャックランタン?」


「カボチャですよ」


「あ!あーそっかそっか。他には……」


「狼男なんてどうですか?」


「あー!うんうん、なんか考えると結構出てくるな。本頼りにしちゃおうと思ってたけど。ちょっと紙とペン貸して」


カウンターに乗り出し、肘をつきながら竹谷先輩がメモを取り始めた。


「魔女なんかも浮かびますよね。マントとかなら100円ショップで安く手に入りますよ」


「お。助かる。魔女……とマント……あ。あとあれだ!吸血鬼!ドラキュラ?」


竹谷先輩がパッと表情を輝かせて、メモする。僕は「いいですね」と微笑んだ。


「面白いなー。狼男って月が駄目なんだっけ?吸血鬼は日光とにんにく」


「今の吸血鬼はわりと日光平気なのが多いらしいですよ?」


「へぇ……ん?あ、そうなのか?」


「はい」


ふぅん?と首をひねる竹谷先輩に、僕は微笑む。


「あ、あとなんだっけ。吸血鬼に血を吸われると、吸われた人間も吸血鬼になるんだろ?あれって本当かな。そんなことになったら人間みんな吸血鬼だしな」


「気になります?」


「ああ、うん。はは。まぁ、ただの迷信……」


瞬間、竹谷先輩の言葉が凍りついた。


「え、あ、要?」


「はい、どうしました?」


「あ、いや、あれ?なんか」


怪しい光が自分の瞳に灯るのがわかる。僕は、竹谷先輩のボールペンを持つ手を優しく握って微笑んだ。


「そんなに気になるなら、試してみましょうか」


「……か、要?」


「大丈夫ですよ、竹谷先輩」


カウンターに乗り出し、竹谷先輩の首筋を舐める。


「慣れれば、気持ちよくなるらしいですから」


「……っあ」


牙を突き立て、毒が首筋から全身に伝わっていく。竹谷先輩のがくがく震える体を、僕は抱きしめて支えた。


「Happy Halloween……ごちそうさまです」



HAPPY Halloween!
良いハロウィンを!



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