淫乱猫を撫でるには。



僕の手が骨ばった背筋を撫でても彼に抵抗する素振りは無かった。
むしろ気持ちよさげに、身体から力が抜けていく。
羽のような重みが僕の胸を圧迫する。

雨水に濡れた服は、彼の体の線を浮き立たせていて、背を撫でていくうち、
指先が彼の肩甲骨に触れた。くすぐるように指を這わせていく。

一瞬だけ耳元で匙沼君の呼吸が乱れるのを感じた。
彼が今、どんな表情をしているのかはわからないが、
拒絶されていない、という確かな事実に悦びを感じる。


匙沼君も僕の背に腕を伸ばして、いつの間にか僕らは抱き合うような体勢になっていた。

普通ではないのはわかっている。

言葉より、時折乱れる吐息で僕らはお互いを確認し合っているようだった。

僕が理性を失っているのか、匙沼君が理性を失っているのか、
至極曖昧で、あるいはお互いに頭がおかしいのかもしれない。
寂しさは人を狂わせる、という。

それこそ、同級生の友人を気が狂うほど欲しくなるように。




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