ヒロインが迎えに来たら。2/6



「ちゃんみおってば、そんな生ぬるいやり方じゃ駄目だって。
 選手交代。」

僕の意識が睡眠へと溺れ沈み始めたところで、
さっきまでの間延びしたものとは相反する凛とした、はっきりした印象の声が
どこかで聴こえた。

声に応じて、心地の良い揺れがぴたりと止まる。
おそらくは、"ちゃんみお"なる少女の手が止まることと同義だ。

弛緩しきった僕の心は、もう少し揺られてたいんだけどなーなんて
生ぬるい事を夢想している。


と、再び僕の肩あたりにやわい掌が触れた。
わりと、というかかなりがっちりと。

先程までの"ちゃんみお"で無い事は掴み方から明らかである。

随分と強い力によって、身体が前後に揺れ始めた。


先程の「選手交代」という言葉が脳裏を掠める。

どうやら、呼びかけても揺らしても目を覚まさない僕に
3人のうちの誰かが痺れを切らし、
優しい起こし方を提供する"ちゃんみお"と、言葉通り「選手交代」したようだ。


だんだんと、僕の身体にとどまらずベットごと揺らす勢いに変わっていく。
ベットがあらぬ音をたて始め、僕はベットのマットレスに幾度も身体を叩きつける。

痛いと感じる隙も無いくらい乱雑。
さっきの揺れとは雲泥の差だ。

女の子とは思えぬ荒技。


恐怖がふつふつと湧き上がる。

休み時間に後ろから襲撃されたときに感じたものと同じた類の。
僕が此処で寝かされるに至った原因でもある、あのときと同じ感覚。

身体中が粟立つのを感じた瞬間、僕は跳ね起きていた。
肩に乗る少女の手を振り払うように。

僕の脊髄が疼いたのだ。






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