「ちゃんみおってば、そんな生ぬるいやり方じゃ駄目だって。
選手交代。」
僕の意識が睡眠へと溺れ沈み始めたところで、
さっきまでの間延びしたものとは相反する凛とした、はっきりした印象の声が
どこかで聴こえた。
声に応じて、心地の良い揺れがぴたりと止まる。
おそらくは、"ちゃんみお"なる少女の手が止まることと同義だ。
弛緩しきった僕の心は、もう少し揺られてたいんだけどなーなんて
生ぬるい事を夢想している。
と、再び僕の肩あたりにやわい掌が触れた。
わりと、というかかなりがっちりと。
先程までの"ちゃんみお"で無い事は掴み方から明らかである。
随分と強い力によって、身体が前後に揺れ始めた。
先程の「選手交代」という言葉が脳裏を掠める。
どうやら、呼びかけても揺らしても目を覚まさない僕に
3人のうちの誰かが痺れを切らし、
優しい起こし方を提供する"ちゃんみお"と、言葉通り「選手交代」したようだ。
だんだんと、僕の身体にとどまらずベットごと揺らす勢いに変わっていく。
ベットがあらぬ音をたて始め、僕はベットのマットレスに幾度も身体を叩きつける。
痛いと感じる隙も無いくらい乱雑。
さっきの揺れとは雲泥の差だ。
女の子とは思えぬ荒技。
恐怖がふつふつと湧き上がる。
休み時間に後ろから襲撃されたときに感じたものと同じた類の。
僕が此処で寝かされるに至った原因でもある、あのときと同じ感覚。
身体中が粟立つのを感じた瞬間、僕は跳ね起きていた。
肩に乗る少女の手を振り払うように。
僕の脊髄が疼いたのだ。
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