風は木瀬から僕の方へと流れて、甘い香りが鼻腔を掠めた。
蒸し暑さなどとうに忘れて、気持ちの悪いほど落ち着いた、
静かで居心地の良い時間が僕らの間に流れる。
「そうだ、なんでこんなとこに居るの?」
僕の声に、木瀬が僕の方へ顔を向ける。
その顔には、堪え切れていないにやにや笑顔が鎮座して、、
「あれ?木瀬、どうしたの」
「え、いや。なんでも? くく、」
なにがそんなに面白いのか。
木瀬の笑いは止まるどころか大きくなっていく。
僕の顔を覗き込んでは肩を揺らして笑う。
「ねぇ、なにがおかしいんだって」
「この世には2種類の人間が居て、山本君はエイリアンに
足元からガリガリと血肉を貪られる人間なんだなーって。」
2本の指を折々、木瀬は楽しそうに言った。
何を暗示しようとしているのか、皆目見当もつかないが、
壮絶に不謹慎なのはわかる。
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