二度目に僕を起こしたのは、華やかであたたかい三色の声であった。
「これが、山本君?」
「ん?」
「たぶん?」
近くで女の子の声がする。それだけで僕の意識は覚醒する。
すぐ近くに、誰だかはわからないが、確かに、3人分の甘い存在感があった。
匙沼の時とは全く違う。ある種、心地の良い心拍数の跳ね上がりを感じた。
夢じゃないよな 。だとすれば
木瀬以外の女の子に感知してもらえるなんて何年振りになるのだろう。
緊張のあまりに身体が動かず、
寝たふり状態になってしまっている自分がなにより恨めしい。
それに、僕を緊張させる一番の理由は、
各々の語尾に疑問符がついているのが気がかりではあるものの、
彼女達はどうやら、僕に興味か用事があるようなのだ。
狭いであろう僕の眠るベットのわきで、
「山本君って...」なんて、ぼそぼそと囁きあう声が聞こえている。
僕を起こさないように気を使ってくれてるのだろうか。
と、ふいに身体がゆれた。
女の子3人のうちの誰かが僕を揺さぶり始めたのだろうか。
憶測を裏づけるかのように、やわい掌を肩に感じる。
優しすぎるそれは、むしろ睡魔を起こすようなのだけど。
「起きなさいなあ」
間延びした声が耳元で囁かれる。
ふんわりとしていて、眠そうでもある声。
耳をくすぐる吐息は、僕をなんとも落ち着かない気分にさせる。
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