僕の向かっている場所。1/4



公園は思っていたよりずっと閑散としていた。
夜の色に染まった木々と、ぼけた白を撒き散らす街頭。

街頭の浮いた錆も捲れた木皮も、夜の黒に溶けてしまっていて
公園のすべてが新しいものみたいに見えた。質量の無い寂しさに襲われる。

ん?

「僕は何を思ってここまで来たんだっけ。」

息抜きだ、息抜きだけど。
行き慣れない不気味な夜の公園に、なんて。

突然脳が、冷や水を掛けられたように静かに冷たくなる。途端に、冷えた脳を襲う疑問符。
炭酸が弾けるように取り留めのなくいくつもいくつも襲ってくる。
しかし、それらがきちんと形となる前に脳は熱を取り戻して、疑問符は消えてしまった。

「なに、いまの」

一瞬のうちに僕を襲い、一瞬のうちに消滅した、なんらかの感覚。
数秒間だけ立ち止まってから釈然としないまま、僕は人影の無い公園に足を踏み入れる。

沼の畔を歩けるように整備された遊歩道を進んでいく。

風が耳を撫でる音だけで、風が止んでしまってからは、ただただ無音だ。
それに加えて、視界に映るのが曖昧な影の物ばかりなため、
なんだか夢を見ているような気分にすらなる。

身体中の感覚が不確かになっていく。
ただの散歩として動かす足がいつしか義務のようになる。

目的なんて無いはずなのに手繰り寄せられるように、
僕の足はしっかりと歩を進めていく。

視界の端で塗り固められたように黒い沼が街頭の光を不規則に揺らしていた。
僕の姿が嫌な無機質さを添えられて反射している。





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