本当の序章。



空はほの明るくこの町全体を包んでいる。
街頭が黒色を撫ぜ回して、景色がマーブル状に映っていた。

部屋着に適当にパーカーを被って、僕は外に出た。
生ぬるい空気が頬を撫でて、別段、心地良くも無い。


ふいに、散歩をする気分になった。

まるで窓枠に何かが潜んでいたかのように、
視界に入った窓枠は僕を手繰り寄せるように、外へ連れ出してしまった。


家の前の大通りにはぽつぽつと、ランニングの格好で走り去っていく人がある。

僕も大通りへ出て、歩くことにする。
夜の静けさや、道幅の広さは、心の喚起には丁度良いのかもしれない。

ポケットの中へ指先をひっかけて、手持無沙汰に通り沿いの地図を目でなぞる。

僕の頭に何処へ行こうかなどという疑問は一切湧くことなく、
ただ、脚はごく自然に大通りを真っ直ぐ行った先にある公園を目指していく。

向かう先も、気温も、人数も、全てが用意されていたかのように、
流れるように単純に簡単に僕はただ、散歩を行う。

僕の思考を覆っていた、中庭の情景なんてどこへやら。


特に意識することもなく。身体の機能を足にゆだねて。

沼を囲うようにして作られた大きな児童公園へと。






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