結局、心の片隅に異物を残したままで学校は終わった。
昼休み以降、木瀬と話す機会は無かったし、
さらに言えば、目が合うことさえ一度としてなかった。
肩のスクールバックの重みと、心の片隅にぶら下がる重みで
帰り道の僕は、どうしようもない猫背になる。
それでも、心のこの異物が閉塞感や寂しさが消える代償として残るものだとすれば、
そんなに安い話はないのかもしれない、なんて思いながら。
異物感はあっても、それは感情のように涙を誘発するものでも、
気が狂うほどに迫ってくるものでもない。
なにより木瀬が残していったものだ。
愉快なクラスメイトと、木瀬。僕を守ってくれる木瀬。
そこには、寂しさの入り込む余地は無い。
はたと足を止めて、おもむろに後ろを振り返ってみる。
当然のように誰とも視線は触れ合わない。
味気ないコンクリートの道と、薄らぼけた電柱。
僕の下校さえも彼女の宣言通り、守られたものなのだろうか。
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