辛いなんて領域に達していない、お子様な甘さを貪る。
涙の膜が引いて、僕は、続ける。
「僕の体質の所為で、そんな可能性の全部が閉じてた。
それが、馬鹿みたいに寂しい、んだ。本当に、馬鹿みたいに。
やりたいことがたくさんあって、でもそれは僕では不可能で。」
「私の交友関係なら可能?」
「そうかもしれない。あと、昨日の僕なら、ね。」
自重気味に紡ぐ僕の言葉に対し、木瀬に同情の素振りは一切無かった。
何かを推し測るような顔をして、一つ頷く。
「ご愁傷様です、山本君。」
「恐れいります。」
風邪が吹いて頬が少しだけ冷たい。
木瀬の弁当箱は7割程に減っていた。まだ残っているが、木瀬は蓋を閉じる。
手が差し出され、ろくに味わいもせず空にしてしまった容器を木瀬に返す。
もったいなかったな。戒めるように割り箸の節くれが指に刺さった。
「山本くんは私が守ってあげる。」
心臓が痛いくらいに一度高鳴った。言葉に呼応したみたいに。
痛ましさを感じるくらいに頼もしい言葉に、語調に、
返す言葉も、僕の取るべき反応も見つからない。
木瀬なら、話してもいいと思った。木瀬へ話せば心が軽くなると思ってしまった。
そして、実際に閉塞感は今のところそっくりと消えている。
でも、それは間違いだったのだろうか。
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