寂しさの方角。2/5



僕と木瀬の組み合わせで、昼食を摂ることはそんなに珍しい事では無い。
と言っても、月に2度あるかどうか、という感じだけれど。

因みに木瀬が誘ってくる構図は、いつものこと。

木瀬は普段、同級生の女の子達と食べているから。
こうやって声を掛けてくれるのも気を遣ってくれているのだ。

その時には僕らは決まって屋上へ向かうのだが、今日に限って何故、中庭なのだろう。
まさか、僕が飛び降りてしまうから、なんて冗談だろうし。

砂埃等の理由から不評の中庭は、僕達の他に地味な雰囲気の男子3人組が
退屈そうに寝転がって居るだけで、随分と閑散としていた。

「なんで中庭?」

木瀬は、日向ぼっこ男子達を一瞥もせずに、大きな円状の花壇の淵に腰掛ける。
僕も隣に腰を下ろす。木瀬がぽつりとつぶやく。

「ここなら、山本君がどう足掻いても死ねないだろうなって思った。」

さいですか。
どうやら、本気で僕が飛び降りると心配しているようだった。

ゆっくりとした動作で、膝の上でお弁当を開いて木瀬が言葉を繋ぐ。

「昨日、楽しかった?」

出し抜けに、的を射過ぎた言葉。

返す言葉が見つからない。

木瀬が、小さい容器にお弁当のおかずを(七味のかかったものを気持ち多めに)移しながら
器用に顔を上げて、黙りこくっている僕の顔を覗き見た。

脳漿を振り絞って言葉を探す。

「正直、ね。」

「その言い方、全然正直じゃない。」

まあ、随分と手厳しいことで。






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