呼吸をしているのか溜息を吐いているのか、判別できないくらい、
僕の心と肺は、閉塞感でいっぱいいっぱいだった。
そのうち木瀬が来て、僕の表情をちらりと伺ってから、
特に声を掛けることもなく、席につき文庫本を開く。
僕もちらりと木瀬に視線を向けて、再度教室に視線を投げる。
昨日、話した誰しもに、きちんと友達が居て、
さも楽しそうに一分一秒を過ごしている。
誰かのモノマネをして笑いあったり、滑稽な動作で笑わせあったり、
誰かのうわさ話や陰口に、眉根を寄せたり。
学園生活が始まって、僕にそんな局面はあっただろうか。
どれだけ考えようとも、見つからない。
こんなの僕だけの感覚じゃないのだろうか。
この教室でどれだけが、今、津波の如く視界を覆う孤独感を感じているというのだろう。
そんなの、きっと、僕だけ、なのだ。
僕だけ、それはつまり僕が異常ということなのだろうか。
友達と楽しそうに登校する、ミオの後ろ姿。
そう、昨日の保健室のそれは、「邂逅」なんかじゃなく。
誰しもに起こるただの「奇跡」だったんだ。
それを僕は、愚直に信じて、こんなに無様に現実を見てる。
高ければ高いほど、落とされた時の痛みは大きい。
理不尽だろう。
僕が何をしたというんだ。
津波の雫が僕の眼に膜を張る。
こんな、非常識な体質。なんて、今更。
今までずっと、上手に受け入れられているのだとばかりと思っていた。
けれど、たった一度の奇跡で、僕の受容するポケットは壊れてしまった。
こんな普通じゃない体質も、ひとりぼっちも受容なんてできない。
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