「ウゥゥァアァァアアアア゙アアアアァァァアァアァアア」
張裂けんばかりの叫び声が周囲の空気を焼いた。
少なくともその時、僕にはそう思えた。
息苦しさのあまり目を覚ませば、痛いほどの清潔感を発する天井と
ベットを仕切るカーテンが、視界いっぱいに広がる。
自分の寝かされている場所が保健室であると理解するのに
大した時間は必要としなかった。
身体を起こそうとした途端、背中に鋭い痛みが走り、
読書中に身体が弾き飛ばされたのを思い出す。
―あのまま、僕は意識を失ったのか。
背骨のあげた悲鳴が今でも耳に残っていた。
なんて後味の悪い音なのだろうか。
痛みに顔を歪めながらもなんとか身体を起こし「はあ」と浅く溜息をつく。
自分の身になにが起こったのか定かではないけれど、
誰かの悪ふざけの流れ弾に当たってしまったとか、おおむねそんなとこなのだろう。
運が良いのか、悪いのか。僕には判断がつかない。
じわり、と周囲の音の境界が溶けだしていた。
時計の秒針の音も、微かに聞こえる保険医の声も、綯い交ぜになって鼓膜を揺らす。
どうやら、耳がハレーションを起こしているようで。
先程のあの叫び声の所為だろうか。
僕は痛みを残す耳を、労るように指で触れる。
先程の叫び声が耳のずっと奥の方で木霊する。
鼓膜にふてぶてしく居座る耳鳴りはまだ消えてくれそうにない。
「...にしても。」
保健室で叫び散らしてくれるとはどれほどの狂人なのだろう。
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