特別な日の終幕。2/2



なんてことを考えている間に、5時限目は終わり
授業間の休み時間も終わった。
そして、いつの間にやら6時間目がはじまろうとしている。

その間、誰も話し掛けては来なかったし、一切の視線も感じることはなかった。
いつもとなんら変わりないはずなのに、僕の心は明白に落胆している。


ちょっと、いつもと違うことが起こったからって何を期待しているんだろうか。
僕は現金なやつなのだった。

無味無臭、無色透明で直線に続いてく日常が、さっきは、
一瞬だけ何かの拍子に屈折しただけであって、結局は直線に進んで行くだけなのに。


保健室で会話を交わした仲良し3人組は、僕のことなどもう忘れてしまっただろうか。
僕の、印象に残り難い体質は、僕の交友関係も希薄にしてしまうようだ。

そして、巡って来た幸運さえも無効にしてしまう。
メリットはすぐデメリットに変わる。


担任もとい、若い数学教師が教科書を閉じると同時にチャイムが鳴った。

自然に漏れた溜息で、僕は心を入れ替えることにする。
そして、いつも通りの伏し目がちな僕になる。

映すだけの目と、あまり需要の無い口、まあ良い。
変わらないってことに一喜一憂はしたくない。


けど、今日をきっかけに何かが変わっていけば良い、と思った。



そういえば、あの3人組みに、僕の名前が「山本」だと言えてないのだ。

それだって訂正できる機会が来ればいい、なんて本当の本当に心の底から思って、
僕は帰りの支度を始めた。

僕の鞄が教科書を詰められて、チャックを閉めると同時に特別な今日は終幕した。





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