花束を抱えて向かう教室。3/6



ちいが手際よく、ベットを区切るカーテンを開けた。

ひらけた視界に映るのはどこまでも見慣れた保健室で、
今はどちらの姿も無いが、匙沼が座っていたイスも保険医の居たデスクもあった。

途端に、現実に引き摺り戻された様な感覚に襲われたが、
彼女達が僕を訪ねてきたのも、さらにはサキの手に触れたことさえも
その現実で行われたことなのだと再認識する他ない。

先程まで自分がどれだけ夢見心地だったのか痛感させられた。


ちいは歩き出そうとしない僕を不思議そうに見ている、
サキは怒っているようだけど僕の体調を気にかけてくれてる、
ミオは何を考えているか不明だけど、とにかくにこにこしている。


今まで一切使ってこなかった運を1日で清算しているような気さえした。

普通の交友関係、普通のコミュニケーション能力を持ち合わせていない
僕だからこその幸運なのではないだろうか。


僕が一歩踏み出したところで、

ちいが先頭を切る形で僕らは教室へ向かった。





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