ぷろろーぐ




全ては一瞬のことだった。

イスに違和感を覚えた刹那にはもう、僕の身体は浮遊感の中にいた。


突如、背骨が悲鳴をあげる。

はっきりと、圧迫されるような鈍痛が
腰のあたりから頭へと駆け上がった。

自転車のギアが切り替わるような音を伴って。


―これちょっとやばくね?


淡い危機感が彼を襲うも、
今の彼に、抵抗の余地は一ミリも残されていない。


浮遊すれば、万有引力よろしく、落ちる。
床に叩きつけられる他ないのだ。


ぼぐりと、嫌に低い打撃音が耳を蹂躙したところで
僕の世界は暗転した。



prev next



- ナノ -