しかし、まあ。
それはつまり、まんまと彼女達の意図するように目を覚ますことなわけである。
さらに言えば、彼女達と向かい合う形になってしまったわけで。
僕を乱雑に揺らしていた主は、僕の咄嗟の行動に驚いたようで、
腕を手持ち無沙汰に持ち上げたまま、一歩後退していた。
「な、なんですか?」
疑問形は上擦った間抜けなものになってしまった。
それもそのはずだ、木瀬以外の女子と話すだなんてほぼ2年ぶりだもの。
3人は、仲が良さそうに狭いベットの脇に肩をくっつけて立っていた。
真ん中の女の子が小柄のため、見事に川の字になっている。
3人そろって先程から意味ありげに目配せしあっているが、
僕に続いた声を発するものは1人もいないようだった。
彼女達は、交友関係ほぼ皆無の僕でも見覚えがある。
全員クラスメイトだ、確信を持って言える。
それも割と目立つ方の。
そして、木瀬と仲の良い。
残念ながら、名前は思い出せないのだが。
「これが山本君ねえ。」
僕を、力技を駆使して起こして下さった女の子が、ぽつりと呟いた。
切れ長で攻撃的な印象の子である。
僕を見つめる目は、睨んでいるようでもあり、品定めしているようでもあった。
「こんな子クラスにいたっけ?」
続いて垂れ目で柔和な雰囲気の女の子が首をかしげる。
真ん中に立っている小柄な子だ。
「でも、サキが保健室送りにしたことは事実なんだし...」
僕が言えたものではないが、これといった特徴の無い
ポニーテールの女の子も伏し目がちに僕を見て、言う。
prev next