冗談じゃない



◎書初めSS




 それはなにもかも、私にとっては理解の及ばないことだった。なにか、質の悪い冗談みたいな演劇が目の前で繰り広げられているのを無理矢理に見せられているような気分だった。
 ぼろぼろに崩れて真ん丸の月が覗く、温かかった我が家。聞いたこともないような悲鳴を上げて逃げ惑う人々。つまらないおもちゃみたいに全身ばらばらになって吹き飛んでいく見知った顔ぶれ。
 これが冗談でないなら、酷いことだと思った。あまりに残酷で堪え難いことだと思った。
 まるで遠い世界での出来事でも眺めているようにぼんやりしていた。そんなところへ急に舞台側からボールを投げつけられて、私はにわかに正気に立ち返った。
 ずしんと重みを増した手と膝元に、ほとんど反射的に視線を落とす。月明かりに照らされる昏く濁った瞳もまた私に倣うようにこちらを見返す。
 ―ボールみたいに小さくされた、私の幼馴染が。


―――
23/01/03


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