春風讃歌



 大地のベッドに寝転んで澄んだ空気を肺いっぱいに吸い込むと、青い香りがする。大いなる風の手が草の根を、樹皮を、満遍なく撫でてゆく。草たちははしゃぎ声をあげながらその身を元気いっぱいに揺らして、ついでとばかりに私の頬にキスを贈ってくれる。
 分厚い氷に全てを閉ざす安穏たる眠りから誰も彼もが目覚めて、季節の巡りを祝福していた。花は首をもたげて鈴の朝露を高らかに落とし、木々は青々として瑞々しい葉を一斉に打ち鳴らす。柔らかな陽光を謡う鳥たちの声音は明るく、穏やかな風声と共に優美な奏でを響かせて、自然たちは一体となって讚美していた。
 結実せよと、春が言う。




―――
~22/01/26(執筆時期失念…………)

画:イナリさん
(skeb(イナリさんのユーザーページはこちら)にて依頼しSSのイメージイラストを制作いただきました。ありがとうございました!)



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