花言葉は知らない



「あんたはいつまでもあたしの一番の親友よ。お幸せにね」

 青い空に白い雲。平和の象徴が飛び交う美しい教会。愛を誓い合った永遠の恋人が結ばれるには最高のロケーション。ああ、なんて素敵な結婚式。
 純白のドレスを纏った花嫁は百合で作られた芳しいブーケを胸に抱き、新郎と腕を組んで人生の新たな門出へ踏み出すように教会の外へと躍り出る。
 ハッピーのお裾分け、未婚の女たちの戦場、ブーケトス。周囲で牽制し合ってるメス共には悪いけど、これはどう足掻いたって出来レース。花嫁はブーケの中から一本、一番瑞々しく華やかに咲いた黄色の百合を新郎の胸にさすと、幸福に滲んだ涙を指で拭ってからあたしの胸元へ白百合の群れをぽんと放った。目を見張るような黄色の鮮やかさを抜き取られて、味気ない白い百合しか残されなかった惨めな花束。花屋のあの子が手ずから育てて、そうして手がけたウェディングブーケ。
 昨晩のあたしは随分な役者だったって、自分で自分を褒めてあげたい。本当はあたしが先にあんたを好きになったんだって、そんなこと言ったって誰も幸せにならないものね。





―――
21/11/11

画:はちおさん
(skeb(はちおさんのユーザーページはこちら)にて依頼しSSのイメージイラストを制作いただきました。ありがとうございました!)

@HACHIO0912



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