人はそれを恋と呼ぶ



 目と目が合った瞬間。いっそグロテスクまである、大きくつやつやした目玉の中に俺が映り込んでいると認識した、その瞬間。鋭く素早いなにかが飛んできて、真っ直ぐに俺の胸に刺さったのだと思った。
 だから、絶対に今ここで仕留めなくてはならないと柄を強く握ったのだ。
 だが、懐いた決意ほどには目の前の人間に手応えはなかった。実に呆気なく奴は事切れた。俺に殺意もなにも気取らせないなんて、なよなよとした見た目に反して大層な手練れだと感心さえ覚えていたのに、たったのひと突きでそいつはぴくりともしなくなった。
 俺はなぜだかその場から離れがたくて、見開かれたままの硝子玉みたいな眼球の上を蟻がよたよた這うのをじっと見つめている。


―――
23/03/24


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