ジャラッとした鎖の音で目が覚めた。

「……何だこりゃ…」

潮江文次郎は、どこか薄暗い場所に、鎖で繋がれていた。

「あっ!!」

そこで聞き慣れた声がして、ふっと声のした方向を向くと、食満留三郎が嬉しそうにこちらに近付いてくる。

「文次郎!!起きたか?」

それはもう本当に楽しそうで、文次郎も思わず頬が緩んだ。二人は恋人同士だ。文次郎は純粋に留三郎が可愛いと思った訳だが、この状況が理解出来ず。取りあえず留三郎に聞く。


「なぁ、留、何で俺は鎖に繋がれてるんだ?」
「文次郎がどこかに行かないように」
「………どこってどこ?」
「例えば、会計室とか裏山とか、い組とか、どこにもいかないように」

それを聞いて、文次郎の顔が引きつった。マズい…かもしれない。留三郎が可笑しい…。
時折留三郎は、こんなふうに狂ってしまうことがある。
それは、例えば文次郎が会計室に籠もって暫く出てこなかったり、い組の実習で帰ってこなかったり…独占欲は強い方なのだろう。だが、留三郎はそれを理性で我慢している。その反動が、文次郎をどこかに閉じ込めるまで来ていた。

「………どこにも行くな、心配するんだ。不安なんだ。」

鎖で繋がれた文次郎に縋る留三郎は、酷く泣きそうな顔をしていた。

そんな留三郎を見て、文次郎は暫し沈黙していたが、半ば無理矢理鎖から自分の両腕を開放する。パキッと鈍い音が鳴ったが、気にしない。

「……っバカが」

そのまま留三郎を抱き締めた。




「こんなもん無くても、どこにいても、俺はお前の所に帰ってくるよ」

腕の中の狂愛は、その言葉に密かに微笑み、彼は日々、狂愛の鎖を巻き付かれていることに気付かない。

「文次郎……」

アイシテル。



※病み食満は確信犯


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