↑おまけ



〜おまけ〜

「おまえなぁ」
「はい…」

俺は何故かい組の部屋で文次郎に正座させられ怒られていた。

「あの時は確かに俺もやりすぎたと思う、お前があまりにも、俺を甘やかすから、俺も甘えたくなって、そういう気分になっちまったのも認めるし、あーでもお前が可愛かったのがまずかったんと俺は思うんだけど、とにかくあのときは俺が悪かった。と、そう思う。けどあれはダメだ。教育上良くねぇし、あのまま回想が続くと俺しか見られないお前の姿が後輩にも見られることになったかもしれねぇだろ、それはかなり、俺が苛立つから嫌だ。」
「お、おう」

運動会終了後、俺のイチャ文発言と、先日の見たばかりの、猫耳文次郎の回想をしたせいで、後輩の教育に良くない、と改めて怒られていたのだ。さすがに後輩の前で、恋人になったとはいえ、いつもの恋人のときの雰囲気を出すのも恥ずかしく、俺はつい売り言葉に買い言葉をしてしまったのだが、やはり二人きりになると冷静に話も出来る。
イチャ文はまぁ置いといて、俺達のイチャイチャを態々後輩の前で思い出さなくても良かったかもしれないなぁ…・

あのときは確かに俺もちょっと乗り気だったけど、俺が恨んだのは伊作だったしなぁ…しかも相変わらず、可愛いとか、甘えたくなるとか、苛立つとか、無意識なんだろうけど、コイツは愛情表現が想像以上に直接的で非常に困る…。
すっごく照れるのだ。何の意図もなく、当たり前だろうと言う風に言ってくるものだから…。

「こっ…今度から気をつける」
「ん、そうしろ、もう正座しなくて良いぞ」

俺が頷くと、文次郎は満足したように笑って、俺は正座から解放された。すると文次郎が部屋の押し入れをさぐると、町に行くときの服を出した。

「で、今から、菓子屋いかねぇか」
「え」
「お前のぶんの服ならここにあるし、俺のおごりだから」
「え、え」

突然の誘いにポカンッと口をあけて文次郎を見ると、文次郎は呆れたように俺を見た。

「お前なぁ、何のためにお前をここに呼んだと思ってんだよ」
「え…せ、説教するためじゃねぇの…」
「…バカじゃねぇの」
「ば、バカってなんだよ!!!ぶっ…」

文次郎の呆れたような目線を受けて、反論しようと口を開くが、文次郎に服を投げて寄越され、それが顔面に直撃した。それを何とかどけて、

「なっ何すんだよ!!」
「…あのなぁ…」

文次郎を睨み返すと、文次郎は呆れたような声を出し、俺との距離をつめた。

「お前をここに呼んだ理由なんて、一つぐらいしかねぇんじゃねぇの?」

そうして、文次郎は、正座から姿勢を崩し胡坐をかいた俺の目の前にストンッと座ると、目の前に人差し指を差し出して、

「お前と…逢引する為…だろ」
「っ」

ヤケに真剣な顔でそう言われ、俺の顔がジワジワと熱に侵食されていくのが分かる。嬉しくてこそばゆい、そんな気分だ。文次郎は不貞腐れたように俺を見ると、少しだけ赤い顔で

「で?行くの?行かねぇの?」

なんて答えを促して来た。答えなくても知ってるくせに、コイツはこいうところがズルい。

「…んなの決まってんだろ」

でもやっぱり俺はコイツが好きなのだ。あの猫耳しかり、今目の前でちょっと顔が赤くなってる文次郎も俺の好きな恋人なんだから、俺は、目の前で座っている文次郎の手を取って、笑った。

「行く」

そうして、真っ赤になった文次郎を見て満足した後、俺は文次郎と出かける為、服を着替える準備をするのだった。


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