反則技の猫の誘惑

※半猫化文次郎有り


他人が見れば、そりゃぁ色々意見はあるだろう。あの潮江文次郎がこんな格好を!!と
ドン引く者も多いと思う。
けど、少し俺の話を聞いて欲しい。
俺、食満留三郎は、用具委員会で委員長を務める忍術学園六年生は組、だ。
同室はあの不運で有名な保健委員会委員長善法寺伊作、となれば、小さいときからその被害の余波を一番に受けてきたのも俺なのだ。

反則技の猫の誘惑

それをふまえて、俺には好敵手が存在する。名前は潮江文次郎、会計委員会委員長、六年い組で、学年一ギンギンに忍者してる。なんて言われているヤツだ。
俺とアイツは昔から喧嘩を繰り返しては、嫌いだバカだのと罵りあってきた関係だ。
けれど俺は文次郎の事が密かに好きで、この学年になるまで、色々と勘違いやすれ違いを起こしてばかりだった。

しかし、五年から六年にあがる際、このままでは何も伝えないまま、最高学年を迎えて離ればなれになってしまう。と感じた俺は、ついに文次郎に告白した。
結果は…文次郎も俺と同じ思いだった。そうして俺達は晴れて恋人同士、という関係になったのだった。
あまり甘い関係になることは少ないが、無駄な喧嘩はしなくなったし、お互い好敵手を続けていたせいか、行動パターンが良く分かるので、同学年からは熟年夫婦、なんてからかわれたりもするけど、何だかんだ俺は今凄く幸せなのだ。

そして話は元に戻るが、先程も離したように伊作の不運の余波はいつも俺回ってくる。だが、俺の代わりに文次郎が伊作の不運の余波を受けたとしよう。…その結果が『これ』だ。
目の前に、猫耳に、猫手に、尻尾をつけた。好敵手件恋人がそこにはいた。

「…ぶっは」
「……」

正直絵面としてはかなり面白い。面白いのだが、目の前で俺を睨む恋人に、俺を庇ったからコイツはこうなったのだ。と思い直して、笑いそうになるのを必死に耐えた。

「わ、悪い…で、でも…ぶはっはは」
「留三郎テメェ…」

が、無理だった、目の前で笑い転げる俺を見て、文次郎の額に青筋が浮かんだが、それも一瞬で、文次郎はそれはもう深いため息をついた。

「まったくお前らは…」
「ごめんよぉ、文次郎ー」
「俺も含むのかよ!!?」

数時間前、伊作が趣味で作っている新薬が完成した。しかし、後で、動物か何かで試そうと思って、医務室の薬棚の上にその薬を置いた伊作は、その数分後、見事に薬棚に激突、伊作はそこで頭を盛大に打ち付け気絶したのだが、たまたま医務室に来ていた俺と文次郎にその薬が激突、しかし、俺は文次郎に庇われ、難を逃れたのだが、文次郎は中途半端に『猫化』する。という事態に陥った。というのが今の状況に至るまでに起こったことだ。
医務室で頭に包帯を巻かれた伊作は困ったように笑い、伊作と一緒くたにされた俺は文次郎の言葉に突っ込んだ。そうすると、文次郎がクワッと大口を開けて俺を怒鳴った。

「当たり前だバカタレ!!毎度毎度、面倒なこと起こしやがって!!」
「伊作だけだろ!?」
「ちょっと待って、留三郎どういう意味さ!?」

中途半端というのは全文にもあげた通りの、猫耳、猫の手、尻尾が生えていて、後は人間のまま、というヤツだ。
確かに面白いし、似合っているか似合っていないかで言えば、正直似合ってないけど、俺は引くよりも、
可愛い、とか思っているのだが、俺が変なんだろうか?似合ってないのに可愛いと思う。の時点でおかしいんだろうけど…正確に言うと、猫化を嫌がってる文次郎にときめくというか、若干恥ずかしそうにしているのが良いと思っている…でもまぁ、俺はアイツの恋人な訳だし、そう思うのは不自然じゃねぇと思わねぇか?
それにコイツ俺のこと庇ってこの姿になったんだし、そう思うと余計に可愛く見えてくるように思う。

取りあえずその後、三人で、この中途半端な猫化をどうしようか?という話になったのだが、伊作は持前の不運で薬の作り方を忘れており、どうにも解決の目通しが立たないので、文次郎はひとまず直るまでは医務室に寝泊まり、ということになった。
文次郎は中途半端な猫化をあまり他人に見られたくないと思っていたようだが、普段は池で寝ても病にならないほど頑丈なアイツだ。何があったんだ!?と学園中に噂は広まる訳で、結局、学園全員に文次郎の中途半端な猫化はバレた。


「…」
「そう怒るなよ…」
「…怒ってねぇよ」
「いーや、嘘だね、耳が立ってるぞ」
「な!!」

その結果、文次郎は現在不機嫌そのものだ。布団に入って頭から毛布を被っている。
そもそもの原因となった伊作は、文次郎を怒らせたのを理解したのか、医務室から出ていってくれた。だが原因はアイツなのだから、文次郎を励ますのもアイツがやれば良いんじゃないかと思うのは俺の気のせいか?面倒なことを押し付けられてる気分だ…。
まぁともかく、代わりに他の生徒に何かあったときは、臨時の医務室として、俺達の部屋を使うようだ。出来るだけ広く使う為、俺は部屋から追い出された。
俺といるときはだいぶ柔らかい雰囲気を出す文次郎だが、今は本当に怒っているらしい、俺が耳が立っていることを指摘すると、バッと自分の猫耳をペタペタと触って確認しただした。しかく確認するその手でさえ猫手なので、動かしにくそうにしている姿が可愛く見えた。

「くそっ…」
「良いじゃねーか、それ、可愛いし」
「!!面白がるなよ!!」

わりと素直に褒めたつもりだったが、今も文次郎には逆効果だったようだ。だから俺は、取りあえず落ちる貸せるため、怒りっぱなしのこの猫を、両腕を広げて、ガバッと覆いかぶさるようにして抱きしめた。

「…っなん、だよ…」
「血圧が上って怒ってる猫を鎮めるための儀式」
「意味わかんねぇ…」
「うん、俺も意味分からねぇけどさ、文次郎…」
「……」
「怒るなってば」

形は何であれ、俺は文次郎と一緒に寝泊まり出来る形になって嬉しい。文次郎には悪いけれど、忙しい俺達だから、そういう機会が増えるのは嬉しい。

「ふっざけんなよ、お前さぁ」

思ったままを伝えたら、文次郎は俺の腕の中で、困ったような呆れたような、なんとも情けない声を出して来た。
顔が真っ赤になっている、ほらみろやっぱり可愛いじゃねぇか。
そう思っていたら、文次郎に抱きしめ返された。猫手でギュッと抱きしめられているので、フワフワの毛と肉球が背中にあたってなかなか気持ち良い。

「ふざけてねぇよー」
「うおっ」

そのまま文次郎を仰向けに転がしてみたら、

「はははっ」
「てめぇ!!」

文次郎が仕返しとばかりに、俺を仰向けに転がした。二人してゴロゴロと子供みたいに転がって遊んでいたら、最終的に俺は仰向けに転がされた。文次郎の目と自分の目が会って。先程まで転げまわっていたのが嘘のように静かになる。
改めて考えると俺ら何やってるんだろうか、というようなことをしていたと思う。滅多にしないイチャイチャを思う存分やってのけてみた結果。

「…食っちまうぞ」
「…」

そのまま、チュッと軽く触れあうだけの口付けをされて、俺はそのまま固まった。

「…っ」

心臓がバクバクと脈を打つ、顔が熱い、耳も、首も全部熱い。
くっ食っちまうとか何言ってんのコイツ!?しかも何ちょっと可愛く口付けてくれてんだよ、中途半端に猫化しているせいで、尻尾が嬉しそうに揺れてるのが見えてしまって俺はもうヤバかった…カッコいいのに可愛いとはたぶんこいうことを言うのかも知れない。

「大丈夫か?」

そういってニッと嫌な顔して笑うアイツは心底嬉しそうで、憎たらしいのに、憎めない。くそ、あぁ、そうだった、猫耳姿に騙されてたけど、コイツって基本的にはこういうヤツだった!!あーもう!!でも嫌いになんて今更なれねぇから、どうしようもなくて俺はさらに焦るしかないのだ。

目の前の俺には酷く効果的な反則技を持った猫は、さらに俺に口付けて俺を誘惑してくるから。

「んっ」

この後の言葉は分かってる。

「留三郎が欲しいんだけど」
「うっ…か、勝手にすれば良いだろ!!」

結局俺はこの日、文次郎に美味しく食べられる結果になったのだった。


後日文次郎の体はすっかり戻っていたが、猫化のせいで手が使えなかった文次郎のせいで、夜一人で頑張ったせいか、腰が立たなくなった俺は、伊作への復讐を心の中に密かに誓った。

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