熱くなるなら最後まで!!

※リーマンパロ


ガヤガヤ、ワイワイ

着ていたビジネススーツを脱いで、入った外回りの店

賑わいを見せる人ごみの中

俺たちはサッサと仕事を終わらす為に、サッサと商談に取りかかる。

そこで、店の社長が出てきた瞬間

アイツは仏頂面を一気に笑顔に変えた。
まぁ、俺も何だけど…。

「「お久しぶりです」」
「おや潮江君に食満君か、今日はなんの要件かな?」

顔なじみの社長は、俺たちが入社当時からの付き合いで、贔屓にしてもらっている1人だ。

「実は、当社の方でまた新製品が出まして、なぁ?食満君」

これぞまさに営業スマイル、と言うがごとく爽やかに笑ってみせた文次郎に、俺もプロ根性を見せつける。

「そうだったな、潮江君、社長、こちらは前回の商品よりも、内容、設備に優れてるんですよ?」



さぁ、勝負だ



「そう言えば、食満君はそう言うのに強いんだっけかね?」
「えぇ、わからないことがあれば、私直々に教えても構わないですよ?」
「いかがでしょうか?社長…?商品に不備がありましたら、こちらの会社で全責任は取らせていただきますし、お電話していただければ、こちらの食満が直ぐに向かいますが……」


社長は暫く黙り込んだ。

結果は





「「うっし…セーコォ!!」」

パンッと片手でハイタッチしながら、俺たちは、炎天下の中、ジャンケンで負けた文次郎に奢らせたアイスを食べながら、
帰宅するために駅まで向かう。

元気があったのはハイタッチするまでで、それが終わると一気に体が重くなった。


正直、怠すぎて死にそうだ。俺たちが社長に売ったのは、パソコンである。営業部は大変だ。

大変なついでに仕事も盛りだくさん。

昨日までは徹夜で受注データ揃えたり、電話したり、とにかく忙しいし。

忙しいついでに、同期のライバルであり、タッグを組めば、絶対に商談を成功できる自信がある潮江文次郎(恋人(一応))は隈が尋常ではない。

今の俺たちはネクタイは完璧に緩めて、スーツの上も脱いで、だらけ状態。

今日この仕事だけで終わったのもある意味奇跡と言える。


「帰ったらビール買って、枝豆買って……」
「今日は花火大会らしいぞ」
「マジで…?じゃあ見に行くか…?」
「いや、寝る」
「そーだな……」


くわぁぁと二人して盛大な大あくび

文次郎は、アイスを食い終わった俺の口に、食べかけの自分が食べていたアイスを押し付けて、伸びをしながらスタスタと歩いていく


「………うまっこれ」

俺もこれにしときゃぁよかったかな…と思った瞬間、固まる。

なんか、あんまりにもナチュラル過ぎて、思わずスルーしそうになったが…

「………!!!?」


間接キスかよ!!あんまりにもお前が普通に行動しすぎて反応に遅れたわ!!ってかすんなボケ!!

近くでその光景を見ていたであろう人達も、あまりの自然さに俺と同様気づかなかったようだが、すぐに気づいてヒソヒソと話し出した。

はっ恥ずかしすぎる…。


夏の日差しを背にした男がニッと笑って手招きする。

「何やってんだぁ?」

手を

繋ぐ

熱が


「おまっ………暑いんだけど」
「いいじゃねぇか、別に」
「…………」

日が傾きだした夕日に照らされた顔が、悔しくカッコいいと感じてしまった。


「暑くなるなら最後まで、ってな」
「……アホ」


暑くなるなら最後まで

この手の温もりは

きっと一生消えてなくならない。


熱くなるなら最後まで!!

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