主導権はどっち?(与文与)



本を片手に膝に大型犬のような男を乗せた同室の男を、仙蔵はなんとも面倒そうに見つめた。

何にしろ醸し出す雰囲気は恋人同士のそれで、空気をぶち壊してまで部屋に入るのは嫌だった。

「まったく……」

潮江文次郎の周りは厄介な人間の宝庫か…
自分もその厄介な人物であることは敢えて置いておく仙蔵だった。



一方、六年い組、寮部屋


パラパラと冊子を捲る音がする。
先程から構って貰えない錫高野与四郎は、文次郎の顔をジッとみる。

「……お前、また寝てねぇな……?」

ジトーッと睨みつけると、文次郎は一瞬ピクリと反応したが、与四郎の頭を数回なでて離れていく。頭を撫でられるのは嫌いではないが、それで流されるかと思ったら大間違いだ。

「寝ろ」
「嫌だ」
「寝ろって」
「まだ読み終わってないんです!!」

与四郎が文次郎の腕をグイグイと掴むと、文次郎は負けじと与四郎の手を引き剥がす

「………」
「………」

文次郎の真っ直ぐなこの目と、笑った顔が与四郎の好みだ。

二人で睨み合うと、文次郎の目は困ったように揺らいだ。それを見て、文次郎を心配しているのに、心配されることを拒まれた与四郎が、拗ねたように、また膝に戻ってしまった。

せっかく遠い場所から久しぶりの恋人との逢い引きを楽しみにしていた自分に何でコイツはこうなんだ。

恨みがましい視線を送られ、文次郎がうっとなる。拗ねると結構厄介なのだこの男

「……はぁ」

文次郎はため息をつくと、与四郎に顔を寄せた。

「……………」

チュッと軽い音がして、文次郎が与四郎から離れていく

「もうすぐだから待ってろ」
「……」

与四郎がボッと赤くなり、文次郎が苦笑いしてポンポンと頭を撫でた。

ちょ、待て待て、今のは……

「…〜っ、お前、そりゃぁ、反則だべ」
「はいはい」


カァァァと耳まで赤い恋人を早く構ってやるために、文次郎は本をまた読み始めた。




「で、結局どちらが上なんだ?」

仙蔵が質問したいことは、与四郎と文次郎どちらが夜間で上か下かと言うことで、その質問に文次郎が目を泳がせた。

「……や、その」

決まってないなんて言えません!!


主導権はどっち?

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