知らないことが多すぎる(与文与) "彼"について、自分は知らないことが多すぎる。 誕生日、血液型、どこに家がある?好きな食べ物、嫌いな食べ物 こんなにあるのに、不思議と知りたいとは感じなかった。 まったくおかしな話である。そんなことも知らずに惚れてしまっていたのだ。 「だから?」 「教えてくれ」 文次郎が首を傾げて、俺が真剣な顔をして話すと文次郎はおかしそうに笑った。 「何で笑うんだよ…?」 「アハハッ、悪い……プッ…だって今更…アハハッ」 文次郎が腕を伸ばして、俺の方に手をかけて顔をうずめた。 「………文次郎?」 「………」 「おーい……」 肩から熱が伝わり、盛大なため息が聞こえた。 「ほんっとに、遅いわ貴様」 照れた顔と笑顔を隠すその姿に、今度は俺は笑ってしまう。 これから知っていこうか でも 少しづつでは物足りない。 だってそれくらい 知らないことが多すぎる 知らないことが多すぎる [back]/[next] |