会いたいなら会いに行け 最近アイツが忙しい、おつかいに試験に委員会に忙しいアイツに迷惑をかけないように会わないでおこう。と決めたまでは良いのだが、そろそろ我慢の限界で。拳はこんなに疼くのに、殴ることも出来ないままだ。 「あー…うー…」 「留三郎、うるさいよ」 「……」 「……」 「あーーー!!!うーーー!!!」 「うるさいってば!!」 は組の教室で唸り続ける俺に、伊作がついにキレた。何だと?俺のどこか喧しいんだ。俺の唸り声なんて、お前が部屋で薬煎じるときの匂いに比べりゃぁ、数倍マシだろーが!! 「文次郎と会えないのがそんなにつまらないかい?」 「……いつ文次郎なんて単語を俺が出した…」 「出さないけど何となく分かるよ…」 呆れたように苦笑する伊作だが、ここには文次郎はいないのだし、変な意地を張る必要もないから、素直に言うことにした。 「…つまらん」 「そうかい」 「大体アイツはどうしていつも、こう何かと忙しいんだ。俺と恋仲のクセに俺を放置しすぎだ」 「仕方ないよ、文次郎はい組だもん、僕たちとは授業内容から何から違うんだ」 「…分かってるよそんなの…」 「何、構って欲しいんだ?かわいー」 そう言って自分でも分かるほどに不機嫌な俺の頬を伊作が楽しそうに突っつくのを、 「やめろ!!」 と言いながら手で振り払う。煩いな、そーだよ悪いか!!俺だってたまには優先されたいと思ったりするんだ。 「でも、留三郎は文次郎の中では一番優先されている方だよね」 「はぁ?」 嘘だ、そんなの、アイツの優先事項は一に忍であること、二に会計委員会、三に勉強、四に鍛錬、アイツの中の俺の優先事項のどれだけ低いことか!!! 「あらー、でもさ、良く考えてみなよ?文次郎が留三郎が介入してきて、構ってくれなかったことなんてあった?」 「あったよ!!布団貸してって言ったら、寝るとこぐらい自分で見つけろって言ってたもん!!」 「もんって…それは、文次郎も疲れてたからでしょー」 「ぐっ…」 「それ以外で」 「それ以外で…?」 確かに忍であることは、俺という恋人をもったことで、三禁をやぶったから優先されていないのかもしれない、会計委員会も乗り込んだときはまず俺の相手をしてくれるし、勉強も自分のを放っておいて、俺に教えてくれることも多いし、鍛錬も何だかんだ誘ってくれる…あれ…?あれぇ…? 「…っ」 そこまで考えたら、辿り着く答えは一つで、俺は一気に顔が真っ赤になった。 「ほらね」 「うっ…」 そら見たことか、という顔をする伊作に、俺は言葉が詰まった。 「考えすぎなんだよー留は、今だって忙しいから会いに行かないようにしよう、なんてやってるみたいだけど、実は文次郎の方が寂しがってるかもよ?」 「!!…ほんと…?」 「本当だよ、大丈夫だから、ほら、会いに行ってきてあげな」 そう言われて、俺は立ち上がり、障子をスパーンッと開けて、文次郎の元に走り出した。 「やれやれ手間のかかる奴らだよ」 伊作が心底呆れたと言わんばかりにため息をついた後で、 文次郎の元に久々に訪れた俺は、愛おしい恋人に出会い頭に抱きしめられたのだった。 会いたいなら 会いに行け [back]/[next] |