初恋はもう一度

俺という人間、俺という忍にとって、あいつの存在は無くてはならない存在なのである。と、完全に相手を認めるにはどうにも、あの時の俺は素直になるのに抵抗があって、結局本当に大事なことも言えないまま、この数年間を生きてきたのだ。

お互いを高めあうことが出来る人物だと、一年生のとき、一目見たときから、直観はあった。
あいつは俺の期待を裏切らず、俺の良き好敵手でいてくれたし、何の遠慮もなく言い合える良い仲間となった。
しかし、数年たつと、俺の一年生のときの直観は、良い好敵手を見つけたというそれだけではないのだと分かるようになった。

そのとき俺は、とくに驚きや嫌悪といった感情はなく、あぁ…そっか…そうだったんだ…というような、案外あっさりとした気持ちに収まった。前々から何となく気付いてはいたのだろう。しかし、それに気付いたところで、この気持ちを本人に言えるはずもなく、しかも卒業したら、いつ出会えるかも分からない相手に恋心を伝えて否定されることを考えたらこの気持ちを言えるはずもなかった。

だから俺は、自分の恋心よりも、あいつと長く過ごせる、学園生活を選んできたはずだ。けれど、それでも我慢できなくなるときもあったので

「「進路先どうするんだ?」」

なんて聞いてみたのだ。そうしたら、お互いの声が揃って、お互い驚いていたが、似たもの同士の俺とお前、そうして素直になれない俺が言う言葉はこんな言葉しか出なかった。

「「誰がお前何かに言うかってたんだ」」

やはり同じ、ひねくれた答えが返ってきて、俺は後々自分を散々恨むことになったのだ。



今思えばそれも、良い思い出で、月日はすぎて、結局思いは伝えられないまま学園も卒業した俺は、その後城勤めをこなして10年、忍術学園の教員試験を受けて見事合格、こうして本日、またここに戻ってきた。

「懐かしいなぁ…」

桜が散る廊下を眺めながら、懐かしの教員長屋を渡って、自分の部屋を探していたら。遠目だが見つけることが出来た。

「「おっここか」」

が、見つけたは良いが、声が被ったので、目の前を見てから…思わず目を見張った。

「「え…」」

前方から見覚えのある、いや、というか、今でも片思いをしていて絶対に忘れられるはずのない人物が、成長した姿で目の前に立っていて、俺はそこで間抜けな声を出してしまう。

「「お、お前」」
「留三郎ぉぉぉ!!?」
「文次郎ぉぉぉ!!?」

そんなバカな、何でお前がそこにいる。と長屋まで駆け寄って、バッと相部屋の札を見てみれば、そこには

「潮江文次郎…」
「食満留三郎…」

確かに、何度確認しても、どう見ても、どこには自分の名前とあいつの名前しか書かれていない。
俺たちはお互いを見合ってから、それはもう複雑な笑顔でお互いを見つめあった。今言えることはこれしかない。

「「嘘だろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」

教員長屋に二人の声が響き渡り、とにもかくにも、俺の諦めていた恋は、そこでもうやり直しを余儀なくされた。


初恋はもう一度

※文次郎の視点、留三郎の視点、お好きな方でお読みください。

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