君の思いは愛おしい 書いても書いても消えない課題に、頭が痛くて泣けてきた。 「…っ」 「留三郎、仕方ないだろう、これは大学生の運命だ」 目の前の仙蔵が頭を撫でてくれているのでなんとか泣くことを我慢することが出来たが、俺はどうしようもなく悔しくて仕方なくなった。目の前の仙蔵と俺は、中学のときに知り合って紆余曲折をへて恋人同士になった。そうして同じ高校に入ったのだが、仙蔵は弁護士、俺は建築士になるというお互いの夢があった為、離ればなれになるのはとても嫌だったけれど、俺は専門科がある大学、仙蔵は超有名大学へと入学した。しかし、お互い忙しく、最近は中々会えることも出来なかったのが、一か月ほど前に、仙蔵の予定が空くことが分かり「二週間後あたり、そっちに泊まりに行っても良いか?」という言葉に、二つ返事したのである。…ところがどっこい 『一か月までに、グループを作って、この建築物について、パワーポイントにまとめて調べてくるように』 『……えぇぇぇぇ!!!』 『うるさいぞー食満ー』 という先生の鬼課題が発生した。しかも先生が課題に出した建築物、資料も少なく、とてつもなくまとめにくい。俺と組んだグループの奴らもそのせいで、バイトを削られたりして、喚いていた。 そうのこうのやっているうちに、二週間後に仙蔵が家に来てしまい。結局俺は、仙蔵と久々にあったにも関わらず恋人らしいこともロクに出来ず、手元のパソコンと向き合うことしか出来なかった。 「忙しいなぁ大学生」 「うー…」 目の前でケタケタと笑う仙蔵は、気にしていないのだろうか、俺は、仙蔵と久々に会えるの、楽しみにしてたんだけどなぁ…そう思うと何故かイライラしてきて、俺は、半ばヤケクソ気味に、パソコンのキーボードを強めにガタガタと叩くように打ち込みはじめた。 「…何イライラしてるんだ?」 「……別に……」 「留三郎」 どうせ…どうせ仙蔵は俺なんかと会いたくなんてなかったんだろ!!と仙蔵が声をかけてくれたのを無視したら 「留三郎!!」 「…っ」 無理やり頭を掴まされて、仙蔵にキスされた。ソファに座っていた体制から、顔だけを、後ろに座っていた仙蔵に向けられる形になり、頭を仰向けに向かされているので、地味に首痛い。綺麗な顔が乱暴に俺の唇を奪って、ゆっくりと離れていった……突然キスされたことに驚いて目を見開く俺とは対照的に、目があった仙蔵は眉間に皺を寄せて、唸るように喋りだした。これは…怒っている。 「…お前…忘れているかも知れないが、お前の課題が終わらないから、私はいつまでもお預けをくらってる…んだぞ」 「え…」 「この馬鹿者が!!!不貞腐れてないでさっさと終わらせろ!!!楽しみにしていたのがお前だけだと思うなよ!!」 仙蔵はそう言うと、俺の頭をバシッと叩いて、俺の後ろから消えてしまった。 「…え…え…」 一方の俺は、そのままの体制で、頭からソファにずり落ちて、去っていく仙蔵の後ろ姿をただ茫然と見ることしか出来なかった。けれど…。 「…くそっ…分かりにくいんだよ…」 それは、楽しみにしていたのが俺だけじゃない、ということで良いんだよな?そう思ったら、先程のキスのこともあってか、俺は自分の顔が、みるみるうち赤くなっていくのが分かった。顔が火照る感触に、冷たい床が気持ち良い。口元はにやけるし、本当にどうしようもない。 とりあえずこの後は、怒っている仙蔵をちゃんと追いかけて、謝らなくちゃ、謝ったら、ちゃんと課題を終わらせて、そしたらもう一度キスをしよう。 俺は自分のにやける顔を押さえて、仙蔵を追いかける為に立ち上がった。 君の思いは愛おしい [back]/[next] |