お昼寝

「っ」
「あ…」

昔からこの木は俺、潮江文次郎の恰好の昼寝場所なのだ。しかし、今回に限り、何故来てしまったのだろうか、と「たまには睡眠取ろう」などと考えた先程の自分を呪いたくなった。

「……何でいるんだ貴様」
「〜っ!!し、し、潮江ぇぇ!?」

それは何故かというと、俺のお気に入りの昼寝場所で、何故か風魔の六年生、錫高野与四郎が眠っていたのだ…涎たらして、それはもう幸せそうに寝ていた…本当に…来なければ良かった。俺も忍として、自分の無防備な姿など他人に見られたくない。錫高野の心境を考えると、見てしまったのは自分だが、なんとも居た堪れない。

「おい…」
「だ、だっから、コッチ来んなぁぁぁl!!!」

普段は飄々としていて掴みどころのないヤツなのだが、自分の失態を見られたせいか、気が動転しているらしい。
俺の目の前で顔を真っ赤にさせて、大慌てする姿が、本当に可哀想で、俺は掌を伸ばして錫高野頭をポンポンッと軽く叩いた。

「っ…?」
「心配すんな、誰にも言わねぇ、まだ寝たいなら、俺はいなくなるから暫くここ使ってても良い」

錫高野は手を伸ばした俺に、肩を盛大にビクつかせたが、俺に頭を撫でられてキョトンッとした顔をしていた。その顔を見て、やっぱり自分と同い年なんだなぁということを実感して何だか嬉しくなる。どうする?と聞くと、錫高野は俺の服の袖をつかんで、ふるふると首を振った。どうやら、ここにいろ、と言うことらしいので、そのまま錫高野が座っている枝の隣に腰を下ろす。

「ん?」
「そ、その…こ、ここが…あんまりにも日が当たって気持ちが良いから…」
「それは分からないでもないが」

何せ俺のお気に入りだ。

「けっして寝顔を見せるつもりはなかった…んだ…ぁよ」
「安心しろ、俺も見る気はなかった

語尾がどんどん小さくなっていく錫高野の頭をまた軽く撫でてやると、錫高野は顔を赤くして俯いた。その姿が、何だかとても可愛く見えて、俺はつい口からそれを言ってしまった

「…お前、意外に可愛いとこあるんだな、知らなかった」
「な!?」

俺がそう言ったことで何故かさらに顔を赤める錫高野に、俺は前言撤回、昼寝をしようと思い至った自分を、とてもほめたくなったのだった。

お昼寝

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