それも一つの愛なのでしょう

大事なら閉じ込めておけば良いじゃないか、と誰かが言った。それを実現することは、実はとても簡単だ。
自分に好意を抱いてくれる相手のなんと無防備なことか、そんな相手なら、誘導するだけで捕まえておける。だが、人が何故それをしないのかと言えば、その行動を抑制出来るからである。それに、相手が本当に大事だと思うのであれば、相手が嫌がることをした結果、自分が傷つくのが分かっているのだ。

私は彼が愛おしい。好戦的なところも、少し間が抜けているところも、後輩思いなところも、何もかも、全てひっくるめて愛おしい。

「留三郎」
「?」
「もし私が、お前を閉じ込めて、一生私だけのモノにしたいといったらどうする?」
「はぃ…?」

私の突然のそんな言葉に、彼は間抜けな声を出して、暫くポカンッと大口を開けていたが、何か考えがまとまったのか、開いていた大口が閉じて私に解答を口にした。

「…少しだけ、待て」
「…は?」

予想外なその言葉に、今度は私が間抜けな声を出す番だった。

「お前のモノになるのは良いんだ、だが、俺はまだまだ未熟者だし、世の中に出たことすらないひよっこ忍な訳だよ?仙蔵は秀才だから、職場も良いところ行くんだろうが、今の俺じゃぁ、お前の立ち位置までは行けないからな」

そう言って酷く真面目に答える留三郎は私の首に手を回した。

「お前から迎えに来てもらうのも嬉しいけど、そこは俺も男な訳だしなぁ」
「つまり…?」
「俺がお前に追いつくまで、待っててくれよ、追いついたら、遠慮なくお前のモノにしてくれ」

そう言ってギュゥッと抱きつく彼に、私は思わず笑ってしまった。

「ふっ…はは」
「何がおかしいんだよ…」
「いや…ははっ」

閉じ込められても良いなんて、なんてことを言うのだろうか、だが、私は彼のこういった部分が好きなのだ。
ジト目で睨み付けるその姿も可愛くて仕方がない。

「自分で宣言したのだから、私から待ちくたびれて迎えに来させないように」
「な!!」
「老人になる前までにはちゃんと追いつけよ?」
「そこまで待たせねぇよ!!」
「さぁ?どうだかな」
「仙蔵!!」

皮肉を込めた言い方になってしまったが、気づいて欲しい。嬉しいのだ。

「留三郎…」
「なっ…」

私はむくれる彼の頬に小さいく口づけると、そのままその体を抱きしめた。

「…好きだぞ」
「…知ってら」

そこで気付く、片方が不本意であれば監禁と言われるそれも、お互いの利害が一致したそれは一つの「愛」だと言えるのでないだろうか、と、だが私は、留三郎を閉じ込めておく気はあまりない。さっきのは軽い冗談ではあるが、留三郎からの以外な返事が嬉しいのでそこは黙っておこうと思う。
彼が本当に輝くのは、人と触れあって、笑顔でいるときこそだ。と私は思うのだ。

それも一つの
愛なのでしょう


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