そばにいるよ



※過去模造
※幼なじみ山仁
※仁之進が男前



「俺は…純粋な風魔じゃないけど…俺を拾ってくれた風魔の為に、頑張りたいんだ。だけど、みんな口を揃えて、俺は余所者だと言う。余所者だから、俺はいつか風魔を裏切ると言う。リリィさんや山村家は受け入れてくれるけど、なぁ、俺は、受けた恩を裏切るようなことはしねぇのに、どうして……」
「うん」


金太は良いヤツだ。

仁義に熱いところもあるので、人に受けた恩はしっかり返さなければいけない思っている節があって、ちょっと厄介だけど、真っ直ぐなその性格はみていて清々しい。

金太の両親は元々は武士だったのだが、戦場で亡くなり、風魔に拾われたそうだ。

金太は頭が良い。運動神経もある。天才とさえ呼ばれている。故に拾われた彼は、周りから余所者だと疎まれて孤独だ。風魔忍術学校ではいつだって一人で、本当は誰よりも優しい金太は、その言葉に傷付いているくせに、反論もせずに我慢する。

農家にいる。平凡で顔もお世話に整っているとは言い難い自分だが、どうしてか、金太は俺を唯一無二の者として、誰よりも信頼してくれている。俺は沢山いる風魔の里の人物達の中で、誰よりも俺を頼ってくれるのが嬉しかった。

俺なら金太を傷付けたりしない。金太ほど良い友達なんてそうそういないんだから、金太の悪口を言う奴らは本当に損をしていると思う。

昼下がりやってくるのは外出届を出した金太だ。
いつもの大きな丸太に二人で腰掛け、たわいの無い話をするのが、俺たち二人の日課になっていた。

金太の苦々しい、今にも泣き出しそうな声を聞いて、俺は、ホッとした。まだ、俺に話してくれているなら、大丈夫。


「そりゃ大変だぁなぁ…」

素っ気ない返事になったが、目線を合わせる。金太にはコレで伝わる。
俺が心配していることも、俺が金太の味方であることも。

金太に茶を入れてやり、金太がお土産にくれた菓子を食べながら、呑気に茶を飲む。

「お前、人の悩みを何だと…」

苦笑しながらも俺の意図は伝わったらしい金太は、俺から茶を受け取り、まだ熱いそれを一口啜った。

「仁之進は気楽だなぁ…」
「なんだぁ?オラだってコレでも大変なんだぁよ、夏は田んぼにえらく虫っころが出て来て大変なんだかんなぁ」
「あぁ、もうそんな季節かぁ…後、仁之進君、俺は一応お前より年上のはずなんだが?」
「…金太が年下のオラより若く見えるのが悪いんだべ。」
「いや、それってお前がフケ…」
「うっさいだぁよ!!!!」

さっきとは違い、賑やかな雰囲気になった金太に一安心。
でも老けてるは一言余計だ。
でも、金太の話を聞いて、俺も『忍』だったら…といつも思ってしまう。

金太との学園生活は楽しそうだ。いや、忍の道がそんなに軽々しいものではないのは、金太を見ていれば充分伝わるけど、金太と朝から晩まで一緒で、一緒に勉強して……農家の自分には到底…第一、学園に入学するには金が掛かる。それを考えでも、無理だ。
だけど例え入学できたとしても、金太と自分では年が離れているので、同じ学年になることは不可能だ。

「人生そうそう上手くいかんなぁ…」
「はぁ?」
「こっちの話ー」
「何のことだよ」

心の中で呟くつもりだった声が漏れたのか、金太はジトーッとこちらを見てきたが、俺が何でも無い。と返すと、そうかよ、とふてくされてそっぽを向いた。
あ、可愛い。俺は金太のこういう、年上の癖に可愛げのあるところに甘かったりする。

「ごめんって金太ー」
「るせー」

両手を合わせて謝って金太の表情を伺うと、うるさいと言ったくせに、ヘラッと優しく笑われ、頭を撫でられた。
あぁ弱い、この表情や行動には心底弱い。
ジワジワと顔に熱が上がるのを感じながら、大人しく撫でられる。
本当に、金太を嫌っている奴らは勿体無い。

決めた。うん、今決めた。


「なぁ金太ー」
「ん?」
「待ってろよー」
「はぁ?」


訳が分からんと笑う金太に、俺も笑い返す。

待ってろよ、


「オラがいつも、金太の側にいれるように頑張るかんな」


ニッと笑うと、ポカンと呆けた金太がいて、俺はそれが可笑しくて笑った。
遠くからカーンッカーンッと鐘の音がして、授業遅れるべ!!と急かすと、金太は焦りながらも丸太から立ち上がり、俺に手を振って走り出した。

……と思ったら

「仁之進!!」
「ん?」

振り返った金太の笑顔に、今度は自分がポカンと呆ける番だった。



「期待してる!!」



それだけ行って、走って行ってしまった。

「〜っ」

先程よりも顔が暑くなったのは、夏の暑さのせいにしておきたかった。





そばにいるよ



あの約束から数十年後
すっかり年を取った二人がいた。風魔忍術学園の校門の前で、すっかり年をとった金太が、眉間に皺を寄せていた。
あ…なんか、怒ってる…?

「遅い」

一言そう言って、俺の手を引いて抱きしめた。そして、すっかり慣れたはずのここの地方特有の方言を無視して、

「だけど来たんなら、もう離れんな」

俺の弱い笑顔で笑ってみせた。金太の為に苦労して金ためたり大変だったんだからな!!

いろいろ言いたいことはあったけど、俺の口から出てきた言葉はたった一言


「あたりまえだべ」


桜の花びらがヒラリと舞った。


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