君が好きでした あぁ、何故俺は泣くのだろう。何て…分かってるんだよ。 この景色の美しさに、涙腺を緩まされた。それと同時に、自分の叶わないであろう恋も自覚した。 そうしたら、俺は泣かずにはいられなかったのだ。 恋を自覚した瞬間に、絶対に叶わないと分かる恋なんて…。 泣く俺に、留三郎はどう思ったのか。だが、俺の体に腕を回すと、ポンポンッと優しく背中を叩かれた。 「文次郎」 「…」 「傍にいて、くれんだよな」 あぁ、そうだな、この胸が張り裂けそうな恋は叶わないけれど、せめてお前の傍で、一番の相棒とか、一番の友人って呼ばれるぐらいにはなりてぇな。お前の心は貰えないけれど、お前の中のどれか一つでも、絶対唯一を貰えれば、俺は頑張れると思う。 けれど今は泣かせて欲しいのだ。 いつか絶対諦めるから、お前が、俺に可愛い女の子を連れて来たら「おめでとう」って言ってやれるぐらいになれるまで…。 「泣くなよ、文次郎」 「っあぁ」 「感動した?」 「あぁ」 「そっか…」 留三郎が俺を優しく抱きしめるので、俺は、さらに泣きそうになって、それを必死に我慢した。 だから俺は、その時気付けなかったのだ。留三郎が、とても泣きそうな顔をしていたことに。 ただ、俺は、この日を、一生忘れられないのだろうと思った。 留三郎の傍にずっといようと思ったこと、 この景色のこと 留三郎のことを…好きだと 気付いてしまったこと ずっと、ずっと…死ぬまで、言わずに…この気持ちは墓場に持っていこうと思った。 初恋は実らないものなのだ。と、誰かが言っていた気がするけれど、それは、好きになった初恋の女相手に、散々努力した結果なんだと俺は思うんだ…。でもさ、なぁ、相手が同じ性別だったら、どう足掻いて行けば良いんだろうな…。 俺は、自分の気持ちに嘘をついた。 「留三郎、俺達良いコンビになれるぜ、お前が空にいって、俺がそれをサポート出来るような、な?」 嘘を…ついたのだ。 「…あぁ」 留三郎が、何か言いたげに言葉を飲み込んだ。その言葉は何だったのか、俺には分からない。 君が好きでした [back]/[next] |