気付かないフリをしてたけど 俺の言葉は、お前の未来に、少しでも良い影響を与えることが出来たんだろうか…そう思ったら、俺は自分の胸が熱くなるのを感じだ。傍にいたいのは、純粋にコイツの夢を応援したいだけじゃないのだと…。 俺は、気付かないフリをしていたけれど…。 「文次郎」 俺が撫でるのをやめたところで、留三郎はスクッと立ち上がって、すっかり暗くなった夜空を見上げた。 気付かないフリをしていたけれど…。 そうやって、見上げる留三郎の横顔が、綺麗で、 でも消えてしまいそうで、 抱きしめたくて、 ただ・・・ 傍にいたくて 「ありがとう」 留三郎が俺を見つめる。留三郎を背景にした夜空は… 「っ」 綺麗、だった。 星空がキラキラ光る。暗がりでも見えるそこは、まるで、宇宙に二人きりでいるような。 「これが俺の秘密の場所」 「すげぇ…」 思わず感嘆の声を出す俺に、留三郎は心底嬉しそうに笑った。 「宇宙にいるみたいな感じになるだろ?」 「今まで、星なんてあんまり見上げたことなかったけど」 俺は堪らなくなって、留三郎に両腕を伸ばして、ギュッと抱き締めた。 「も、んじろう?」 「綺麗…だな」 抱きしめたくて、傍にいたくて、 お前が、『好き』で 「留三郎、ありがとう」 俺は、気付いたら、何故か泣いていて、留三郎が 「も、文次郎?え、お、おい」 焦っているのも知らんぷりして、ただただ、留三郎を抱き締めた。 「すげぇ、宇宙に二人でいるみたいだな」 俺はこの景色のような、けれど、本当の宇宙に、お前を送り出す。 それは少しだけ寂しい気がしたが、それよりも嬉しいと言う気持ちの方が勝った。 「留三郎」 この世界を見せてくれたお前が…好きだ。 「留三郎…っ」 俺は留三郎の肩を借りて、静かに泣いた。 気付かないフリをしてたけど [back]/[next] |