無重力世界への招待状



屋上の夕日

「何だよ、泣くなよ」
「泣いて…ねぇよ」
留三郎を見て笑ってやると、留三郎はムッとした顔をしたが、

「文次郎」
「わっ!!」
「ちょっと、来い」

俺の手を掴んで、図書室の机からガタンッと立ち上がった。
留三郎に引きづられる形で廊下に出た俺は、若干焦る。何だ!?

「留三郎!!どこ行くんだよ!!」
「…秘密!!」
「はぁ!?」

ニッと笑う留三郎に、俺は訳がわからないながらも、どんどん引きづられるまま付いていく。

そうしてたどり着いた場所は、



「屋上?」

放課後の夕日が差し込む屋上は、キラキラと眩しくて、俺は純粋に、綺麗だなぁと感じた。

「これが秘密の場所?」
「そう」

留三郎がそうやって頷くが、俺に綺麗だとは感じるが、ただの屋上にしか感じないのだが…。

「最近の学校の屋上ってさ、鍵掛けられてるとこが多くて、なかなか登れないとこが多いんだよな」
「あぁ」

確かに、最近は、なかなか屋上には行けないと聞く、この学校は、そんなことは無いけれど。

「俺がこの学校を選んだのはさ、屋上があるからなんだ」
「屋上が?」
「そう」

そうやって、広い空を見上げる留三郎が振り返る。

「…」


その光景が

まるで時が止まったかのように、

綺麗で、俺は思わず目を細めた。


「暫くまってろ、後数分、この季節なら、良いもんが見れるはずだから」
「良いもん?」
「そ、それが俺の秘密」

留三郎が笑いながら、ポツリ、ポツリと話し出す。

「文次郎」
「ん?」
「俺さ、お前に、将来の夢がバレるまで、ずーっと、宇宙飛行士になんて、自分には無理だろうなって思ってたんだ」
「あぁ」
「だってさ、俺って頭良くねぇし、テストの順位だって、下から数えた方が早かったし」
「そうだな」

留三郎がそう良いながら、屋上の給水タンクに登って手招きするので、俺もそれについて、登って、給水タンクの丁度良いところに二人で座る。
俺が留三郎の言葉に同意すると、留三郎は眉間にシワを寄せた。

「そうだなってお前…」
「実際バカだったじゃねぇか」
「う」

留三郎が言葉に詰まっている光景に、俺はケラケラ笑いながら、でも、と付け足す。

「ほんと、頑張った」
「努力…したからな」
「自分で言うなっ」

ふふんと、えばる留三郎の頭に、俺は軽いチョップを食らわせた。

「だっ!!何すんだよ!!お前が褒めたんだろ!?」
「あぁ」
「っ」

そのままチョップから頭を撫でてやると、留三郎はそのまま俯いてしまった。

「なぁ」
「あぁ」
「お前が、俺の夢をバカにしかなったから」
「あぁ」
「今の俺は…頑張れてんだぜ…」

そう言われて、俺の留三郎を撫でる手は止まった。

屋上の夕日

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